あび卯月☆ぶろぐ

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萩野貞樹『旧かなづかひで書く日本語』

2008-05-23 00:36:05 | 言葉・国語
以前から何度か述べてゐるやうに私は私的文書はすべて正字正假名で書くやうにしてゐる。
大学ノートなんかもさうで、本来、私的文書は正假名で綴つても、漢字は略字(新字体)を用ゐればよいのだらうけど、忘れない為に面倒でも画数の多い、正字を書くやうにしてゐる。
だから、友人が私のノートを借りた時など、随分閉口するやうで、「これはなんと書いてあるの?」と困つた顔で訊ねられることしばしばである。
たゞ、残念ながらパソコンでは殆んど新字新仮名で打つてゐる。
パソコンで正字正假名を打たうとすると煩が並でないからだ。
(今回の記事では假名遣ひのみ正假名にした)

いふまでもなく、私が正字正假名派になつたのは福田恆存先生の影響だ。
『私の國語室』を読んだからといふより、福田先生の著書に親しんで自分も先生と同じ假名遣ひをしようと思つたからだ。
『私の國語室』を読んだのはその後になる。
私が大学に入学した年だから、だいたい五年程前の話だ。

さて先月、本屋で萩野貞樹『旧かなづかひで書く日本語』といふ本を目にした。
はじめ、正假名遣ひを覚える為のハウツー本かなと思つて訝しげに手に取つた。
パラパラめくつてみるとなかなかどうしてしつかりした内容の本だつたので即購入。
著者の萩野貞樹さんは『私の國語室』文庫化に際し、福田先生から校正を依頼された程の人で、勿論それよりずつと前から正字正假名派であつたとのこと。
本書で『私の國語室』を「戦後一連の国語改革に対する、徹底的、全面的な批判の大論文」で、それまで国語問題に関心の無かつた人も「一気に目覚めさせてしまふ強烈な印象」を与へた正字正假名派の基本文献と評してゐる。

本書(『旧かなづかひで書く日本語』)はおよそ二部構成になつてゐて前半が正假名習得法、後半が戦後国語改革に対する批判論文になつてゐる。

前半は大変丁寧に正假名の綴り方を解説してあり、正假名初心者でもすぐに習得できるやるに書かれてゐる。
興味深いことは萩野貞樹さんは正假名で綴る理由について、理窟ではなく「なつかしく慕はしい」感じがするからと云ふ。
さらに、正字についても第一に「カッコいい」からだとしてゐる。
勿論、正字正假名が如何に論理的・合理的かといふ事実も論じてゐるし、新字新仮名が文化に及ぼす悪影響についても多くの紙面を費やして論じてゐる。
しかし、同時に感情面の理由も併せて述べてゐる点に私は好感を持つた。
福田先生やその支持者は決して「慕はしいから、カッコいいから正字正假名なんだ」とは云はないやうに思ふ。
むしろ、さういふ感情面の理由を表に出すことを恥てゐるきらいがある。
私も多分に理窟ではなく、福田先生の假名遣ひに愛着と云はうか、やはり慕はしさを持つたから正字正假名で綴り始めたクチだ。

そして、溜飲を下げたのは後半。
著者はまるで福田先生が乗り移つたかのやうに戦後の国語改革を痛烈に批判する。
まづ、新字新仮名にされ、さらに漢字制限のため多くの漢字が平仮名に改められた中島敦の『山月記』について「ただただ醜い模造品であり偽装文にすぎません」と述べた上で、それが教科書に掲載されてゐる事実を踏まへ、「これほど露骨な偽造文書を、ホンモノであるかに偽つて若者に売りつけ、しかも授業料を徴収したりするのは、非教育的であるのみならず、「未成年者ノ知慮浅薄ニ乗ジテ」利益を謀るものであつて、まさに刑法二百四十条(準詐欺罪)にも該当しようかといふ犯罪です」と斬る。
後半の刑法のくだりは福田先生といふより呉智英先生のやうですね(笑)
ともあれ、中島作品に限らずこの類の改編(改竄)は「文藝の出版社としては見るに耐へない恥であり、作者への最大の侮辱」であると喝破してゐる。
そして、国語改革派については古くは新井白石にはじまり、森有礼(この人は日本語を廃止してフランス語にすべしと云つた初代文部大臣!)、戦後国語改革の一級戦犯カナモジカイの松阪忠則に至るまで「国語を壊さうとした人たち」として名前を挙げてゐる。

本書は全篇を通して平易な文章で読者に語りかけるやうに書かれてゐて大変読みやすい。
だから、正字正假名初心者の方には是非お薦めしたい。
そして、この本を読んで興味を持つた方は前述の福田恆存『私の國語室』や高島俊男『漢字と日本人』などをお薦めいたします。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今、萩野著作で勉強中です♪ (まっつん)
2015-02-22 16:55:02
はじめまして

旧仮名で日記をつけようと、ただ今勉強中。
そんなところへ、この日記。
思わず開いて、拝読しております。

基本的に、わたしは維新を全否定する立ち位置。
田舎にわか侍連の暴虐振りにハラワタ・・です。

三が日も過ぎたので、ゆるんだ気持ちを引き締めて、今年はさらなる実りの年へと、五十路女の決意新た。

旧仮名愛好の輪を広げたい~☆

お邪魔しました
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