25日(金).わが家に来てから今日で787日目を迎え,誰かの北海道土産「白い恋人」を前に独り言を言っているモコタロです
なに 白い変人だって? おいらのご主人のことか???
変人じゃなくて恋人だったじゃん おいらオヤツの方がいいや!
閑話休題
昨日,夕食に「クリームシチュー」と「生野菜とツナのサラダ」を作りました 寒い時はシチューが食べたくなりますね
も一度,閑話休題
昨夕,サントリーホールで読売日本交響楽団第564回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番ハ短調」,②ブラームス「交響曲第4番ホ短調」です
①のピアノ独奏は88歳のイェルク・デームス,指揮は一回り下 76歳の小林研一郎です
その一方で読響は,コンマスに若手のコンミス 日下紗矢子を持ってきました
イェルク・デームスは1928年オーストリア生まれ.56年ブゾー二国際コンクールで優勝して以来,世界各地でカラヤン,クリュイタンス,サヴァリッシュ,小澤征爾らの指揮者と共演したほか,ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ,エリザベート・シュワルツコップ,ペーター・シュライヤーなど世界的な歌手とも共演しています 最近は毎年のように来日しピアノ・リサイタルを開いています
この曲を聴くに当たって,ダニエル・バレンボイムのピアノ,オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア・オーケストラによるCD(1967年録音)で予習しておきました 信じられないほどゆったりしたテンポによる堂々たる演奏です
私の場合,この演奏が一つの基準になります.はっきり言ってハードル高いです
1曲目はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番ハ短調」です この曲は1796~1803年に書かれ,1803年(ベートーヴェン33歳)ウィーンで初演されました.若き日の傑作です
第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」,第2楽章「ラルゴ」,第3楽章「ロンド:アレグロ」から成ります
頭髪も顎鬚もロマンスグレイのイェルク・デームスがゆったりした足取りでピアノに向かいます ロマンスグレイで統一,ということでもないでしょうが,衣装も輝くシルバーです
オシャレです.88歳です
コバケンのタクトで第1楽章が開始されます 独奏ピアノの出番までオケだけの演奏が続きますが,その間デームスは目の前のピアノの鍵盤を見つめたまま まったく動きません.まるでランゲが描いたモーツアルトの肖像のようです
しかし,その横顔はまるでブラームスその人のようです.「あっ,ブラームスがベートーヴェン弾いてる
」と叫びたくなります
いよいよピアノの出番となると,シャキッとして力強い第1主題を打ち下ろします
第1楽章を聴いていて,「いったい何なんだろうか,このエネルギーは
」と思いました.本当に88歳ですよね?と念を押したくなるようなスムーズな指の動きです
とても良いな,と思ったのは第2楽章「ラルゴ」です.第1楽章よりかなりテンポを落としてデームスのペースで進みましたが,ベートーヴェンの緩徐楽章の良さが伝わってきました
第3楽章のロンドは若い演奏家のような溌剌とした演奏とまではいかないものの,キチッとした音楽を奏でていました
会場いっぱいの拍手とブラボーです カーテンコールでコバケンに手を引かれて中央に歩く姿をみると,76歳のコバケンがすごく若く見えます
これを「人間観察における相対性理論」と言います. ウソですけど
気を良くしたデームスはアンコールに応えました 私はベートーヴェンのピアノ・ソナタのどれかと思ったのですが,後でロビーの掲示を見たらシューベルトの「即興曲作品142-2」でした.これがとても良い演奏でした
なお,気になったので家に帰ってから確かめたら,私がシューベルトの曲を勘違いしたベートーヴェンの曲は「ピアノ・ソナタ第12番作品26」の第1楽章冒頭部分でした なぜこの曲の第1楽章を覚えているかと言うと,数年前に浜離宮朝日ホールで聴いた韓国の若手ピアニスト,HJリムのピアノ・リサイタルでこの曲が演奏された時の印象が強かったからです
彼女の演奏は下のCD(全集)で聴けます
休憩時間に当ブログ読者Nさんとホワイエでコーヒーを飲みながら歓談しました お互いに「とても”枯れた演奏”とは程遠い演奏で,身近な”枯れたお年寄り”と比べて 88歳のデームスのエネルギーはいったい何なんだろうか
」という驚きを語り合いました
「長い音楽人生で何回この曲を演奏しているんだろう?」という話も出ました
デームスの本領が発揮されるのはベートーヴェン,シューベルト,ブラームスを中心とする古典派・ロマン派が中心でしょうから,ベートーヴェンのこの第3番は数えきれないくらい演奏しているのではないかと推測します
メロディーはすっかり頭に入っていて,指が自然に動くのかも知れません
アンコールがあったせいか,方針が変わったのか,いつもは20分の休憩時間が15分に短縮されていたので,残念ながらゆっくり話をする時間がありませんでした
さて,休憩後はブラームス「交響曲第4番ホ短調」です この曲は1884~85年に作曲され,85年10月(ブラームス52歳)にマイニンゲンで初演されました
第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・モデラート」,第3楽章「アレグロ・ジョコーソ」,第4楽章「アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート」から成ります
この曲は,カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルによるCD(1981年)で予習しておきました クライバーは速めのテンポで押していきます
コバケンが指揮台に上がりますが,協奏曲の時と違い低い指揮台を使っています 第1楽章がヴァイオリンの最弱音で ため息をつくように開始されます
すべての楽章を通じて感じたのは,コバケンがチャイコフスキーの交響曲の演奏で示すような,「タメを作って一気に爆発させて演奏効果を高める」やり方,別の言葉で言うと「テンポを自在に変える」方法,いかにも音楽を”作っている”と思わせる恣意的な印象はありませんでした
コバケン・フリークに言わせれば「そこがたまらないんだよ
」と言うかもしれませんが・・・とにかく,この日の演奏は全体的に音楽の流れが自然で 素直に聴けました
今回が たまたまそうだったのか,ブラームスの第4番だったからそうなったのか,はっきりとは分かりませんが,そういう印象を持ちました
コバケン+読響は現在 ブラームスの交響曲全集を録音中(第1番+ハンガリー舞曲集/第3番+シューベルト「未完成」は発売中)とのことですが,今回の第4番はそれに向けてのリハーサル的な演奏だったのかも知れません
と言うのは,あまりにテンポを動かした演奏はすぐに飽きられ,繰り返しの再生に不向きだからです
演奏後,いつものようにオケの主要メンバーを立たせ,次いでセクションごとに立たせ,拍手を求めました その後,いつものルーティーン・ワークで,拍手を制し「今日は読響の皆さんの素晴らしい演奏からオーラをもらいました」とオーケストラを讃え,「デームスさんは私たちを(音楽の)高みに誘ってくださいました
会場にデームスさんいらっしゃいますか?」と会場に呼びかけました.すると会場左前方の出入口近くの席に座っていたデームスが手を振って応えました
その後「アンコールにハンバリー舞曲第1番を演奏します
音のうねりを感じていただければと思います
」と話し,演奏に入りました.コバケンらしい濃厚な演奏でした
オーケストラの定期演奏会ではアンコールをしないのが”普通”ですが,上記の通りコバケン+読響はハンガリー舞曲を録音しているほどなので 曲が楽員の身体に染み込んでいて,全体を一度さらっただけで アンコールに臨んだのかも知れません
昨夜はわたしも同じコンサートを聴きました
コバケンさん、先月の日フィル(田園)、ハンガリー国立放送フィル(幻想)と、たまたま立て続けに聴きました
>>恣意的な印象はありません
という部分ですが、前に回の演奏でもわたし自身同じことを感じました
最近のコバケンさん、良いです
コバケンの指揮についてコミミさんも同じように感じられたとのこと.私一人じゃなかったんだ,と思い多少自信を持ちました.音楽素人なので有難く拝聴しております.ありがとうございました