25日(日).わが家に来てから今日で817日目を迎え,小学生の子どもを持つ親に成り代わって本音をのたまうモコタロです
子供にとってはクリスマス 親にとってはクルシミマス ってか
閑話休題
佐藤正午著「永遠の1/2」(小学館文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年 長崎県生まれ.1983年に本作で第7回すばる文学賞を受賞し作家デビュー.2015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を受賞しています
主人公の田村宏は,失業した途端にツキが回ってくる 婚約相手との関係をたった2時間で清算できる,趣味の競輪は連勝する,脚の長い女をモノにできる,と申し分のない新年を迎えた ところが,その頃から,競輪場や街中でしばしば人違いに逢い,身に覚えのない厄介な男に絡まれたりしたうえ,わけの分からない事件に巻き込まれてしまう そこで気が付いたのは,自分にそっくりな男が同じ街に住んでいるということだった 自分にそっくりな人物はいったい何者なのか.田村は追求を始める.彼は1/2の片割れに出逢うことができるのか
この作品は1984年1月に集英社から単行本として出版され,86年5月に文庫化,2016年10月に著者自身による「あとがき」を加えて小学館から刊行されたものです その「あとがき」が本文と同じくらい面白いのです.その中で佐藤正午は
「たまに,自分が書いた小説を読み返して ほれぼれすることがある」
と書いています.その例として「鳩の撃退法」と「5」を挙げています.そして,
「でも読まない本もある.いまあなたが手にしているこの本,この小説,この『永遠の1/2』は例外である これは読み返さない.なぜなら,これは小説家佐藤正午のデビュー作だからだ.デビュー作といえば聞こえがいいけれど,言い換えれば,デビュー作とは,要は,小説家がアマチュア時代に書いた小説のことだろう.・・・・ほんとうは僕は『永遠の1/2』をあんまり読み返したくない」
と続けています そして 今回,小学館文庫で新版が出ることになり,著者のところに分厚いゲラ刷りが送られてきたのを受けて,
「鬱陶しい.読んでゾワッとするのも怖い.が,著者として校正作業に加わらないわけにもいかない おまけに担当の編集者から,文庫の『あとがき』を書けと言ってきた.文庫なら普通は『解説』が付くんじゃないかとごねてみたのだが,解説の引き受け手が見つからないのだという.じゃあ読むしかない」
と書いています.私が面白いと思ったのはここです⇒「解説の引き受け手が見つからない」.佐藤正午ほどの小説巧者ともなると,怖くておいそれと「解説」など書けないのではないか,と思うのです 「ヘタなことを書いたら 自分が恥をかくことになる」と誰もがしり込みするのではないかと 編集者が「解説の引き受け手が見つからない」と言ったのは,「何人かに声を掛けたが すべて断られた」というのが真相ではないか,と確信します
この小説が書かれた1986年と言えば今からちょうど30年前のこと.その頃の佐藤正午氏はクラシック音楽にも興味があったようで,この作品の中には次のような作曲家と作品が登場します
チャイコフスキー「大序曲1812年」 50ページ
グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」 51ページ
シベリウス「交響曲第1番変ホ短調」 51ページ
モーツアルト「ピアノ協奏曲第23番」 89ページ
モーツアルト「クラリネット五重奏曲」 230ページ
モーツアルト「ディヴェルティメント ニ長調K.136」 316ページ
なお,この作品のタイトル「永遠の1/2(2分の1)」は日本語ではなく英語で登場します(218ページ)
「ぼくは酒瓶に手を伸ばした.胴体に黒のマジックで”20勝”と殴り書きしてあるボトルからたっぷり注いだ.
伊藤は” half an eternity " と書いてある瓶を開けながら・・・・」
ぼくは田村,伊藤は教師です
読む手が止まらない面白さです.お薦めします
も一度,閑話休題
昨夜がクリスマス・イヴで今日がクリスマス そこで 都内のコンサートホールのクリスマス・ツリー・コレクションをお送りします
サントリーホール
サントリーホール前 カラヤン広場
東京オぺラシティコンサートホール
新国立劇場
新国立劇場エントランス
すみだトリフォニーホール
第一生命ホール
ミューザ川崎
(ツリーじゃないけど)NHKホール前のイルミネーション
楽しいクリスマスを過ごせるといいですね
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