5日(木)。わが家に来てから404日目を迎え、久々にアップに耐える顔を披露するモコタロです
どうだい ウサギにしちゃあ いい顔してるだろう
閑話休題
昨日、新宿ピカデリーで「METライブビューイング2015-16」の第1作、ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」を観ました ウィークデーのど真ん中の昼間にも関わらず、多くの観衆が集まっています。すわ、オペラブーム到来か?と思うほどです
キャストはレオノーラ=アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)、マンリーコ=ヨンフン・リー(テノール)、ルーナ伯爵=ディミトリ・ホヴォロストフスキー(バリトン)、アズチェーナ=ドローラ・ザジック(メゾソプラノ)ほか、演奏=マルコ・アルミリアート指揮ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出=デイヴィッド・マクヴィカーです
幕が開く前に、歌手のスーザン・グラハムがMET総裁のピーター・ゲルブにインタビューしましたが、その中で、バリトンのホヴォロストフスキーが脳卒中からまだ回復しきっていないのにも関わらず今回の公演に出演している、とコメントしていたのでビックリしました
アルミリアートがオーケストラ・ピットに登場、第1幕が開きます。このオペラの物語は、簡単に言えば、ジプシーの老婆によるルーナ伯爵一家に対する復讐劇ですが、アリアに次ぐアリア、そして二重唱、三重唱と、息つく暇もなく音楽が流れます これほど、歌手陣が複数揃っていないと上演できないオペラもないでしょう その点でいえば、ゲルブ総裁が語っていたように「新シーズン第1作に相応しい、これ以上のキャストはない」ほど充実しています
レオノーラを歌ったアンナ・ネトレプコの魅力は言葉では言い尽くせないほどです 第1幕で歌う「穏やかな夜」、第4幕で歌う「恋はバラ色の翼にのって」をはじめ、マンリーコやルーナ伯爵らとの二重唱、三重唱など、美しくドラマティックな歌で圧倒します
ルーナ伯爵を歌ったホヴォロストフスキーは、第1幕で舞台に登場しただけで満場の拍手が起こり、オケが序奏を演奏しているのに、鳴りやまないので、いったん演奏を止めて、拍手が収まるのを待って再度演奏を始めたくらいです もちろん聴衆の頭の中には”脳卒中”のこともあるでしょうが、そうでなくても彼の人気は絶大です 第2幕第2場での「君が微笑み」をはじめとして深いバリトンが心の底まで響きます
マンリーコを歌ったヨンフン・リーは韓国出身のテノールですが、若手の有望株でしょう オケに負けない高音部はタダ者ではありません。第3幕で歌う「見よ恐ろしき炎」をはじめ楽々と歌っているような感じがします
さて、このオペラの影の主役はジプシーの老婆アズチェーナです。この役を歌ったザジッグはMETデビュー25周年ですが、デビューがこのアズチェーナだったとのことです 言ってみれば彼女の一番の当たり役で、たとえば、このオペラでマンリーコやレオノーラが他の歌手に代わっても、アズチェーナはザジッグで変わらないのです。それほど存在感が抜群です
第2幕が終わり、休憩に入ったところでアンナ・ネトレプコへのインタビューがありましたが、彼女の息子が”映像デビュー”を飾りました ネトレプコにまとわりついて、「ママ、早く歌って!」と甘えています それを見たスーザンは「早く歌ってもらって、一緒にお家に帰りたいのよね」とフォローしていました。その後「子供とペットはかわいいものよね」とも言っていましたが、映画を観ている観衆にバカ受けでした
2011年のMETオペラ来日公演でネトレプコも来日する予定でしたが、残念ながら福島の原発事故の影響で来日を断念しました そのとき、彼女の息子は乳飲み子でしたから、子どもへの影響を心配したのでしょう。せっかく高いチケットを手配したのに残念でした しかし、ホヴォロストフスキーは来日して歌ってくれました。これは嬉しかったです
さて、マクヴィカーによる演出の大きな特徴は、回り舞台を有効に使ったテンポの速い展開です 彼の演出で「イル・トロヴァトーレ」を観ると、このオペラの命は”軽快なテンポ”ではないか、と思えてきます 第2幕の「アンヴィル・コーラス」(鍛冶屋の合唱)の迫力もこのオペラに花を添えています。素晴らしい演出でした