人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

HJリムのベートーヴェン・リボリューションを聴く~ピアノ・ソナタ第8番、12番、23番、32番

2013年06月22日 07時00分26秒 | 日記

22日(土)。昨夕、浜離宮朝日ホールでHJリムのピアノ・リサイタルを聴きました 彼女のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会(第19番と第20番を除く)の一環です。プログラムはベートーヴェンの①ピアノ・ソナタ第8番ハ短調”悲愴”、②同第23番ヘ短調”熱情”、③同第12番変イ長調”葬送”④同第32番ハ短調です 使用楽器はヤマハCFX。日韓関係が微妙な中、韓国のピアニストが日本製のピアノを弾くことに挑戦します 結論から言えば、それは衝撃的な演奏でした

 

          

 

自由席のため早めに会場へ 5列16番の右ブロック左通路側席を押さえました。会場は7~8割程度くらいの入りでしょうか。最前列中央の席に音楽評論家・宇野巧芳氏の姿が見えます そもそも私がHJリムのベートーヴェンを聴こうと思ったきっかけは、たまたま新聞紙上で宇野氏の「この演奏会を聴かないと後悔する」という論評を見たからです

ロビーでプログラムを読んでいると、「6時45分から7時までHJリムによるプレトークがあります」というアナウンスがありました 時間になると上下黒一色の衣装に身を包まれた長い黒髪のHJリムが通訳とともに登場、この日演奏する4曲について彼女の解釈を披瀝しました 500円で買い求めたプログラムにも彼女自身によるソナタ全曲の解釈が載っていますが、演奏する側がどういう姿勢で楽曲に取り組むのかが分かり、プレトークとともにとてもいいことだと思います

 

           

 

演奏は7時5分から始まりました。1曲目のソナタ・ハ短調”悲愴”は、ベートーヴェンがタイトルを付けた唯一のソナタです ”悲愴”というタイトルが相応しいのかどうか、むしろ熱情に近いニュアンスだと思います もっともこの後演奏するソナタ・ヘ短調が”熱情”というニックネームをもっているので紛らわしくなりますが

第1楽章に入るや否や、力強いピアノ演奏に彼女の尋常ならざる集中力を感じます 何という強靭なベートーヴェンなのか 「お行儀のよいベートーヴェン」とは無縁の、なりふり構わぬベートーヴェンが鳴り響きます 長い黒髪、黒い衣装、獲物を追いかける雌豹のような俊敏な動き・・・・・・・・若き日のマルタ・アルゲリッチを想い起します

2曲目のソナタ・ヘ短調”熱情”では、その演奏スタイルが一層顕在化します。一言でいえば”狂気迫る演奏”です まるでベートーヴェンがリムに乗り移ったような演奏です もしベートーヴェンが生きていて、この会場で彼女の演奏を聴いたなら、終わるや否や舞台に駆け上がって彼女を抱きしめるでしょう。「私は、こういう演奏を待っていたのだ」と叫んで。

CD売り場に「サイン会あります」の表示があったので、15分休憩にロビーで彼女のCDを買いましたベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(輸入盤8枚組・3990円)です。さて、どのCDにサインをしてもらおうかな、と悩みました

プログラム後半第1曲目はソナタ・第12番変イ長調です。第3楽章に送葬行進曲があるため”葬送”というニックネームが付けられています リムは第1楽章が始めって間もなく、右手を挙げ人差し指を左右に振りました。「ノー、ノー」というサインです 彼女の書いた解説には「弱り切った心の内や精神状態が第1楽章の変奏曲によって奏でられ、もはや手の届かないところにある人世の喜びに哀愁のまなざしを向けているかのようだ。このソナタを作曲したすぐあと、彼はハイリゲンシュタットで遺書をしたためているのだ」と書いています この時、彼女はベートーヴェンと会話をしていたのです。身振り手振りで「そんな弱気になっちゃだめだよ」と語りかけていたのです

ソナタ・第32番ハ短調はベートーヴェン最後のピアノ・ソナタです。第2楽章の第3変奏はまるでジャズです リムは自由にテンポを揺らして演奏します 最後に演奏される穏やかな音楽は、リムの言葉を借りれば「勝ったとか負けたとか、そういうことではない。日本に”悟りをひらく”という言葉があるが、そういう世界だ」という音楽です

終演後、圧倒的な拍手 とブラボーが会場を満たしましたが、何度も舞台の呼び戻されたリムは、ついに折れて、アンコールを演奏しました。演奏前にリムが「マイ・フェバリット~」と言ったので、彼女のお気に入りの曲を演奏したのだと思いますが、サインをもらうことに気を取られて、アンコール曲名を控えるのを失念してしまいました

通路側席の利点を生かして、すぐにロビーに行きサイン会に臨んだのですが、本当は1番だったのに、脇から一人の中年男が割り込んできたので2番になってしまいました しかも、この男、何をとち狂ったか、手持ちのCDを4~5枚も広げ、プログラムも広げて、すべてにサインをもらおうとしているのです さすがに、係りの人にサインを求める人が多いので、一人1枚にしてほしいと言われて諦めたようです私は4枚組CDのうち、この日の演奏曲目を収録した4組目のCDジャケットにサインをしてもらいました

 

          

           

 

今後しばらくはコンサートでベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴く気にはなりません どんな演奏を聴いても凡演に聴こえてしまうでしょうから この日の演奏はまさに今回のキャッチフレーズ”ベートーヴェン・リボリューション”にふさわしい革命的な演奏でした 他のコンサートと重なっていなければすべての公演を聴きたかったと思います。それが心残りです 宇野氏に感謝しなければなりません。いずれ彼は”音友”や新聞に演奏会評を書くのでしょうが、内容はだいたい想像できます 

 

          

 

プログラムに載った予告によると次のリムのベートーヴェン・リボリューションは「ベートーヴェン生誕250年祭」の2020年(今から7年後)、その後はベートーヴェン没後200周年の2027年(14年後)とのこと。”生きていれば”必ず聴きに行きます その前に、次回のHJリムの来日予定は来年2014年11月とのこと。プログラムは何だろうか?気になります。もちろんこれも聴きに行きます

 

          

 

コメント (2)
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