7日(金)。5日の朝日夕刊に「天才少女 全盛期の調べ バイオリニスト故・諏訪根自子~NHKで録音発見」という記事が載りました 記事を要約すると、
「美貌の天才少女として一世を風靡したバイオリニスト、諏訪根自子(1920-2012)が、NHKのスタジオで東宝交響楽団(現・東京交響楽団)と共演したブラームスの”ヴァイオリン協奏曲二長調”の音源が同局のアーカイブに残っているのを音楽評論家の片山杜秀さんが見つけた NHKによると、1949年11月28日に放送したラジオ第2”放送音楽会”の録音だという。ドイツから帰国した4年後の演奏で、くしくもベルリン・フィルと演奏したのと同じ曲だった NHK-FM”クラシックの迷宮”で29日夜に放送される」
東京フィルの文京シビックシリーズでご一緒している久我山在住のAさん、その幼友達で早稲田在住のTさんなどは、「私たちが若いころは、ヴァイオリニストと言えば巌本真理か諏訪根自子、ピアニストと言えば安川加寿子ぐらいでしたよ」といつもおっしゃっているので、きっと聴いてみたいのではないでしょうか 29日(土)夜のFM番組表を要チェックです
閑話休題
昨夕、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、ボロメーオ・ストリング・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅡ」公演を聴きました プログラムはベートーヴェンの①弦楽四重奏曲第10番変ホ長調”ハープ”、②同第11番ヘ短調”セリオーソ”、③同第12番変ホ長調です
クァルテットのメンバーはニコラス・キッチン、クリストファー・タン(以上ヴァイオリン)、元淵舞(ヴィオラ)、イーサン・キム(チェロ)の4人です。彼らの演奏の特徴は、楽譜の代わりに全員がマックブック(パソコン)を使用し、スコア全体を見ながら演奏することです
彼らは5日間に分けてベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するのですが、残念ながら他のコンサートと重なっていて3日間しか聴けません
自席はオープニング・コンサートの時と同じC4列3番、センターブロックの左サイドです 舞台上には譜面台の代わりにアイボリー色のマックブックが載せられた4台のスタンドと椅子が並びます。それぞれのマックブックからコードが下に伸びていてマウスのような器具につながっています これは足で軽く踏むと電子楽譜がめくられる”フットマウス”で、第1ヴァイオリンのニコラス・キッチンが開発したスグレモノです ヴィオラ席を除いて椅子が高く調整されています
拍手に迎えられて登場したクァルテットのメンバーは、プログラムで紹介されている写真よりも年季が入っているようです 左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンという編成です
1曲目の第10番”ハープ”が神秘的に始まります。続いてハープのようなピチカートの伴奏にのって爽やかなメロディーが奏でられます 第2楽章はアダージョですが、ベートーヴェンのアダージョはとても心休まります 第3楽章のスケルツォは交響曲第5番”運命”の「タタタター」の動機が反復されます。ベートーヴェンは何かと戦っています 第4楽章は主題に基づく6つの変奏曲です
第1ヴァイオリンが良く歌います。対面の第2ヴァイオリンも負けじと対抗します。ヴィオラは立派な体格を生かして力強い演奏を展開します。チェロはここぞという時に存在感を示します。4人とも音楽の表情が豊かです
次の第11番”セリオーソ”は日本語で「厳粛」という意味ですが、第3楽章「スケルツォ」の激しい曲想に由来します 第4楽章は暗い音楽が続きますが、突然、明るい曲想が現われ疾走してフィナーレを迎えます。ベートーヴェンに何が起こったのでしょうか
休憩後の第12番は晩年のベートーヴェンが、「第9」初演後に、久しぶりに弦楽四重奏曲に取りかかった意欲作です 第1楽章を演奏する時の4人の幸せそうな顔が印象的です この曲は何と言っても第2楽章のアダージョが素晴らしいです。心の平安を感じます
演奏を振り返ってみると、このクァルテットはパワフルで表情豊かである一方、抒情的なニュアンスも失わない魅力的なグループだと思いました
ところで、ミュージックガーデンのプログラムは全日程を網羅したものなのですが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を中心に書かれた「一目でわかるベートーヴェンの生涯と傑作」は非常に分かり易く参考になります 例えば、弦楽四重奏曲第7番”ラズモフスキー第1番」(1806年)の隣の「他の代表的作品」欄にはヴァイオリン協奏曲(1806年)、その隣の「生涯の主な出来事」欄には”テレーゼ・マルファッティに求婚し断られる”(1810年)、その右の「日本・世界の出来事」には神聖ローマ帝国滅亡(1806年)、ハイドン没、メンデルスゾーン生(1809年)といった具合です。Good Job!