23日(月).昨日,新宿三丁目のシネマート新宿で2009年オーストリア・ドイツ合作映画「ピアノマニア」を観ました ピアニストではなく,ピアニストを陰で支えるピアノ調律師に光を当てたドキュメンタリーです
主人公のシュテファンはピアノの老舗ブランド「スタインウェイ」社の技術主任を務めるドイツ人調律師です.フランスのピアニスト,ピエール=ロラン・エマールがバッハ晩年の未完の傑作「フーガの技法」の録音に挑むことになりました そこからシュテファンとエマールの”最も望む音”への戦いが始まります
ウィーン・コンツェルトハウスで録音することになったのですが,エマールが気に入っていた備え付けのスタインウェイは売却されてしまいます シュテファンはその代替ピアノを求めてスタインウェイ社に出向き,新たに名器”245番”を選びます ところが,ハンマー部分に取り付けるフェルトの幅が0.7ミリ足りずシュテファンは頭を抱えます
さらにエマールは音に厳しく,「もっと広がりのある音が欲しい」と言う一方で「収斂するような音が欲しい」と間逆のことを平気で主張します.シュテファンは根気よく話を聞き,妥協点を探っていきます また,「チェンバロのような響きが欲しい」という要求に対して,シュテファンはピアノの上に載せる反響板を特注して作り,求める音を作り出します
エマールは録音の直前になって,「やっぱり求めている音とは違う」と言い出します.シュテファンは「倉庫にもう一台スタインウェイがあるから,弾き比べをしてみたら?」と持ちかけます.エマールは弾き比べて「こっちの方が求める音に近い」として,最終決定します より完璧を求めるピアニストに対し,シュテファンはあらゆる可能性を探り解決策を見出そうとします
この映画を観て,ピアノ調律師はアーティストの求める究極の音をピアノから引き出すべく,それこそ命がけで仕事に取り組む”職人”であると思いました 普通の神経の持ち主では精神的に参ってしまうでしょう.強靭な神経の持ち主でなければ務まらないと思います
この映画の中では中国のランランがシューマンの幻想曲を弾くシーン,エマールがピアノの弾き振りでモーツアルトのピアノ協奏曲第17番を演奏するシーン,アルフレート・ブレンデルがシューベルトを演奏するシーンなどが映し出されていて,音楽好きには楽しい映画です
ところで,「ピアノマニア」とは誰のことを指すのでしょうか?ピアニスト?それともピアノ調律師?その両方なのでしょうね