15日(日)その2.14日(土)付日経朝刊に「公益法人改革,収益改善が急務 オーケストラ 存続へ正念場」と題する記事が載りました 記事は次のように書いています.
「企業主催の公演の減少,自治体の補助金減額でオーケストラの運営は厳しさを増しており,赤字の楽団も多い.大半が財団法人で,政府の公益法人改革に伴い,来秋までに財務健全化を迫られている.税の優遇が受けられる新公益法人に移行するには財務の健全化にメドをつけたうえで,来年11月までに申請する必要がある」
記事は,日本オーケストラ連盟調べによる首都圏オーケストラの2010年度の収支状況を紹介しています(12団体).主だった団体の経営状況は以下の通りになっています
NHK交響楽団は 収入32億5100万円に対し 支出30億2800万円で 2億2300万円の黒字
読売日響は 22億2300万円に対し 19億1100万円で 3億1200万円の黒字
東京フィルは 20億2700万円に対し 17億3800万円で 2億8900万円の黒字
東京都交響楽団は 18億9700万円に対し 18億6300万円で 3400万円の黒字
東京交響楽団は 12億7100万円に対し 12億8500万円で 1400万円の赤字
日本フィルは 11億4900万円に対し 12億8000万円で 1億3100万円の赤字
新日本フィルは 11億2500万円に対し 11億7200万円で 4700万円の赤字
東京ニューシティは 4億2000万円に対し 4億2000万円で 収支ゼロ
東京シティフィルは 3億6400万円に対し 4億3200万円で 6800万円の赤字
この一覧表を見てやっぱりと思ったことと,以外だと感じたことがあります.
①NHK交響楽団と読売日本交響楽団は,強力なスポンサーがバックに付いているので当然収益状況は良いはずである.
②東京フィルは過去に新星日響を吸収合併して楽員もそれだけ多く,多面的に事業展開ができるメリットがあるので収益状況は良いはずである(コンサートホールで演奏会を開くと同時に,新国立劇場でオーケストラ・ピットに入ることも可能).
③以外なのは,あれだけ多面的にコンサートを展開している東京交響楽団の方が,官営による東京都交響楽団より収入が少なく,しかも赤字になっていること.
④同じく,新日本フィルの方が,日本フィルより収入が少ないこと(ともに赤字だが,赤字幅は日本フィルの方が多い)
⑤同じく,東京シティフィルの方が,東京ニューシティ管弦楽団よりも収入が少ないこと(シティフィルの方は赤字である)
いずれにしても,公益法人改革は待ったなしなので,公益か一般かを選択しなければなりません 目指すは税法上メリットのある公益財団法人でしょうが,記事にあるように来秋までに財務の健全化を計った上で申請する必要があります
世界の中でも東京は観客獲得激戦区ですが,生き残りのための方策として挙げられるのが「地域密着」です.江東区のホール「ティアラ江東」を根拠にしている東京シティフィルの音楽監督に就任する宮本文昭は「江東区内のホールでミニコンサートを積極的に開いていきたい」と語っています
記事には書いてありませんが,すみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルは,一部のコンサートで,墨田区の住人がチケットを安く手に入れることが出来る制度を導入しており,満席に近い観客の獲得に成功しています こうした経営努力も合わせて総合的に対策を練っていかなければならないでしょう
一番望ましいのは,景気が回復して税収が増えて,オーケストラへの補助金が増加することですが,景気の回復がないまま消費税だけが上げられようとしている現状では(もちろんこれからの社会保障を中心とする財政基盤の強化のためには,導入は避けられないことは理解しますが),ますますコンサートを聴く人が減っていってしまうのではないかと懸念します