人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

オーケストラの死活問題~公益法人改革に向けて楽団は何をすべきか

2012年01月15日 08時48分06秒 | 日記

15日(日)その2.14日(土)付日経朝刊に「公益法人改革,収益改善が急務 オーケストラ 存続へ正念場」と題する記事が載りました 記事は次のように書いています.

「企業主催の公演の減少,自治体の補助金減額でオーケストラの運営は厳しさを増しており,赤字の楽団も多い.大半が財団法人で,政府の公益法人改革に伴い,来秋までに財務健全化を迫られている.税の優遇が受けられる新公益法人に移行するには財務の健全化にメドをつけたうえで,来年11月までに申請する必要がある」

記事は,日本オーケストラ連盟調べによる首都圏オーケストラの2010年度の収支状況を紹介しています(12団体).主だった団体の経営状況は以下の通りになっています

NHK交響楽団は 収入32億5100万円に対し 支出30億2800万円で 2億2300万円の黒字

読売日響は     22億2300万円に対し  19億1100万円で 3億1200万円の黒字

東京フィルは    20億2700万円に対し  17億3800万円で 2億8900万円の黒字

東京都交響楽団は 18億9700万円に対し  18億6300万円で  3400万円の黒字

東京交響楽団は  12億7100万円に対し   12億8500万円で   1400万円の赤字

日本フィルは   11億4900万円に対し  12億8000万円で 1億3100万円の赤字

新日本フィルは  11億2500万円に対し  11億7200万円で   4700万円の赤字

東京ニューシティは  4億2000万円に対し    4億2000万円で         収支ゼロ

東京シティフィルは  3億6400万円に対し   4億3200万円で   6800万円の赤字 

 

この一覧表を見てやっぱりと思ったことと,以外だと感じたことがあります.

①NHK交響楽団と読売日本交響楽団は,強力なスポンサーがバックに付いているので当然収益状況は良いはずである.

②東京フィルは過去に新星日響を吸収合併して楽員もそれだけ多く,多面的に事業展開ができるメリットがあるので収益状況は良いはずである(コンサートホールで演奏会を開くと同時に,新国立劇場でオーケストラ・ピットに入ることも可能).

③以外なのは,あれだけ多面的にコンサートを展開している東京交響楽団の方が,官営による東京都交響楽団より収入が少なく,しかも赤字になっていること.

④同じく,新日本フィルの方が,日本フィルより収入が少ないこと(ともに赤字だが,赤字幅は日本フィルの方が多い)

⑤同じく,東京シティフィルの方が,東京ニューシティ管弦楽団よりも収入が少ないこと(シティフィルの方は赤字である)

いずれにしても,公益法人改革は待ったなしなので,公益か一般かを選択しなければなりません 目指すは税法上メリットのある公益財団法人でしょうが,記事にあるように来秋までに財務の健全化を計った上で申請する必要があります

世界の中でも東京は観客獲得激戦区ですが,生き残りのための方策として挙げられるのが「地域密着」です.江東区のホール「ティアラ江東」を根拠にしている東京シティフィルの音楽監督に就任する宮本文昭は「江東区内のホールでミニコンサートを積極的に開いていきたい」と語っています

記事には書いてありませんが,すみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルは,一部のコンサートで,墨田区の住人がチケットを安く手に入れることが出来る制度を導入しており,満席に近い観客の獲得に成功しています こうした経営努力も合わせて総合的に対策を練っていかなければならないでしょう

一番望ましいのは,景気が回復して税収が増えて,オーケストラへの補助金が増加することですが,景気の回復がないまま消費税だけが上げられようとしている現状では(もちろんこれからの社会保障を中心とする財政基盤の強化のためには,導入は避けられないことは理解しますが),ますますコンサートを聴く人が減っていってしまうのではないかと懸念します

 

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セルゲイ・ハチャトリャンのベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を聴く~東響第65回オペラシティシリーズ

2012年01月15日 07時40分18秒 | 日記

15日(日).昨日の「ケータイによる演奏中断」の続報です.昨日の日経夕刊によると,ニューヨーク・フィルの演奏中に携帯電話のアラームを切らず,演奏中断のハプニングを引き起こした男性が「本当にひどいことをしてしまった」と指揮者・ギルバートらに謝罪したとこのこと 60~70歳前後の男性は2つの会社の経営者で,使い始めたばかりのiPhoneをマナーモードに設定していたが,演奏中に目覚まし時計機能のアラーム音が鳴り始めたとのこと

こういう”事件”は演奏者だけでなく,回りで聴いている聴衆にとっても,集中力が散漫になる不愉快きわまる出来事です.男性は後悔の念で2日間眠れなかったそうですが,今回のハプニングは本人にとって絶好のアラーム(警告)になったことでしょう

 

  閑話休題  

 

昨日,初台の東京オペラシティ・コンサートホールで,東京交響楽団第65回オペラシティシリーズ聴いてきました プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調”田園”」,②同「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」の2曲.指揮は秋山和慶.ヴァイオリン独奏はアルメニア生まれのセルゲイ・ハチャトリャンです

通常のコンサートでは田園とヴァイオリン協奏曲の演奏順を逆にすると思いますが,田園はフィナーレが静かに終わるので,前半に持ってきたのかもしれません

交響曲第6番「田園」についてベートーヴェンは「この交響曲は絵画ではありません.むしろ田園での喜びが人々の心に呼び起こす様々な感情を描き出した作品です」と述べ,最初に付けていた「田園の生活の思い出」というタイトルを削除,出版譜には「田園交響曲」とだけ記しましたこの穏やかな「田園交響曲」は,闘争的な第5番「運命交響曲」とほぼ同時期に作曲され,初演日も同じでした

秋山和慶の指揮は,どんな曲を聴いても素晴らしいと思います.奇をてらうことなく正面から音楽に対峙します 秋山和慶といえば今公開中の映画「カルテット」に指揮者として出演しています.田園交響曲では管楽器が活躍しますが,オーボエの荒絵理子,フルートの甲藤さちはいつ聴いてもいい味を出しています 管楽器がいいと,やっぱりベートーヴェンはいいなと思います.

「ヴァイオリン協奏曲」は創作意欲に燃えていた時期に書かれました.この曲はベートーヴェン自身がピアノ協奏曲に編曲しています

指揮者とともにソリストのセルゲイ・ハチャトリャンが登場します.第1楽章冒頭,ティンパニの静かな連打が始まります が,痩せたハチャトリャンは,見るからに自信なさそうな顔で下をうつむいています 寅さんではありませんが,「おい,そこの青年!元気出せや」と激励したくなるほど情けない表情です

ところが,前奏に続いてヴァイオリンが入ってくると,「なんだ,この音は」と驚きに変わりました ヴァイオリンの音そのものが美しく,粒が立っているのです.解説によると,使用楽器は日本音楽財団から貸与されているグァルネリ・デル・ジェス(1740年製)とのこと.さすが!と思いましたが,楽器だけの力ではないことが分かります.それは第1楽章終結部のカデンツァに現れました 何と豊かな音楽を奏でることができるのか とくに弱音が素晴らしく,これは彼の演奏の特性かも知れないと思います.ゆったりとしたテンポで朗々と歌わせるのも彼の特徴かもしれません 時間を計ったわけではありませんが,演奏時間は長めだったのではないかと思います.しかし,ただ長いだけでなく,じっくり”聴かせて”くれます

第3楽章フィナーレが終わると,ブラボーと拍手の嵐になりました.演奏直前の”情けない若者”は,聴衆から喝采を受ける逞しい”英雄”に変貌していました

鳴り止まない拍手にアンコールを演奏しました.バッハの無伴奏の何番かを静かに演奏.またしても拍手が鳴り止まず,もう1曲演奏しました.演奏に先立って曲名を言ったのですが聴き取れませんでした.高音部を中心とする静かで美しい曲でした

東京交響楽団の演奏会で秋山和慶を指揮者に迎えるコンサートは,いつもソリストが素晴らしい人ばかりです.ソリストの選定には秋山の意向・希望が反映しているのかも知れません.ハチャトリャンは,演奏上の特性からシベリウスの協奏曲なんか合っているのではないかと思います.今後の動向から目が離せないアーティストの一人になりました

 

          

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