今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

突然停止のPEN-Fの巻

2017年02月09日 23時53分19秒 | ブログ

あら、ピンボケ画像すみませんね。PEN-F系が続きますねぇ。PENも最近は若い世代の方からのご依頼が多くなっていると感じますが、この個体のオーナーさんは大学生さんです。で、入手後、空シャッターを切っていたら突然このような状態で止まったとのこと。リターンミラーが戻らないのは良いとして、シャッター幕の止まり方がイヤですね。何が重大な故障が起きています。

トップカバーを開けて見ると・・巻き上げレバー復帰用のバネが外れています。と言うことは・・

 

あっ、これだ。巻上地板が折れています。折れた部分が落下でシャッターに干渉して停止したものです。折れた突起部分は巻き上げレバーの当たり(ストッパー)とバネ掛けの役目をしています。巻上げレバーを強く巻いてストッパーに当てると長い間に金属疲労で折れてしまうのです。特にストッパーの役目ですから地板の熱処理が強く、硬いですが折れやすいのです。まぁ、それほどこの部分の破損が多いわけではありませんけどね。これは良品の地板と交換するしか方法がありません。

巻上地板ASSYです。この地板も設計変更を受けていまして、ストッパー部分の形状違いで2種類存在します。まぁ、改良されても折れるのですけどね。元々、片持ちのストッパーで巻き上げレバーを受ける設計が良くないのです。このタイプの地板のストックが無くて、やっと探し出して来ました。このトラブルは多くはないのですが、確実に発生しています。これからは金属疲労が進んで行きますので、折れるトラブルは増えて行くでしょう。つねに私のところに交換ストックがあるとは限りませんの、気を付けて扱ってください。

洗浄をした本体に組み込んだところ。片持ちですから、地板基部に負荷が掛かっていますので、巻上げレバーはゆっくりと優しく巻いてくださいね。メンテナンス不良で巻き上げが重くなっている個体ほど無理な力が掛かる傾向がありますね。

その他、シャッターユニットやプリズムなどは比較的良いコンディションです。テンションシャフトもきれいですから、あまり使われていませんね。

 

#2プリズムの状態は良いですね。Fの場合は黒点の腐食がある個体が多いですが、このプリズムは完璧に近いです。保管は良かったと思います。フレネルレンズ側がマットのピント面になっています。

 

フレネルレンズは汚れ放題ですが、幸い拭きキズは少ないようです。きれいに清掃をしておきます。

 

全反射ミラーは清掃で再使用とします。

 

 

これで組立は完成。

 

 

底部の状態。

 

 

完成してみると、かなり良い個体になりましたね。使用頻度は少ないのに巻上地板は破損してしまったということ。お話をしておきますけど、レバーがストッパーに当たるのは1回目の巻上げ時で、2回目は先に巻上が完了するように設計されていますのでストッパーには当たらないのです。1回目の巻上げに注意です。交換部品のストックがあって良かったです。若い世代の方が受け継いで行ってくださるのがうれしいですね。

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リターンミラー剥離のPEN-FTの巻

2017年02月06日 20時30分37秒 | ブログ

リターンミラーが剥離したPEN-FT #2311XXですが、この時点でミラーを接着するだけの限定修理かO/Hかが決まっていません。観察するとすでに過去にも剥離をしていて、再接着を受けていますね。この接着剤はセメダインの多用途型(黒)かなぁと思いますが、リターンミラーの接着には向きませんね。

トップカバーを開けて見ると・・電源のリード線が紫色。渋いですね。たぶん電池室の液漏れにより交換をしたのでしょう。プロの仕事です。しかし、Cds部の遮光テープは無いし、モルトも省略されているようです。

 

ルーペ基部のモルトも古いモルトはきれいに取り去られているのですが、新しいモルトを貼っていない。見えないからいいかな? と悪魔のささやきがあったのでしょうか?

 

23万台の頃ですと、セルフタイマーの留めネジ位置がレンズマウントに近いので、マウントを外さずにタイマーユニットを分離しようとすると・・画像のようにドライバー軸でマウントが削れてしまいます。みなさんの愛機も見てください。これは非常に多いです。30万台の中頃から、ネジ位置がマウントから離されてドライバーが干渉しないようになっています。ふだんSSからのフィードバックでしょうか。この変更によって、セルフユニットの穴位置も二種類存在します。

で、ミラーホルダーです。ちょこちょこっとヤスリ掛けをして貼ったのね。古い接着剤をミラー共、完全に清掃をしておきます。

 

接着完了。前板に組み込んでいきます。

 

 

リターンミラーユニットの調整ネジ部が曲げられていますね。これはダメですよ。ここで、オーナーさんからのご連絡が入りました。状況からO/Hにされるそうです。

 

23万台ですでにテンションスプリングは条数の多いタイプに変更されていますね。シャッターユニットは悪くはありません。

 

この個体はリターンミラーユニットに問題があったようです。⇧のバネカケの角度が変です。これは、ネジが緩んで軸との嵌め合いがズレているのです。このような場合、テンションが落ちてリターンミラーが復帰しない症状になります。急速回転する部分ですので、緩み止めを塗布していないと容易緩んでしまいます。

結局、バネの掛かり位置も不適で、調整をしてあります。

 

 

メカ部完成。ハーフミラーはすでに社外品と交換されていましたので再使用としてあります。

 

付属は25mm f2.8ですけど、過去にカビの清掃を受けていますが、結構厳しい状況ですね。

 

問題は前玉です。ここは2枚貼り合わせですが、その接着面が水滴状に見える劣化があります。カビ痕もありますね。

 

不具合がリターンミラーの作動ユニットに集中していましたが、ファインダーのピント調整も出来てめでたしめでたし。人様の修理機は思わぬところで落とし穴があったりしますので気を抜けませんね。

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遊んでましたの巻

2017年02月05日 22時07分56秒 | ブログ

すみません、限定修理のPEN-FTを終えてから自分の時計を研究していました。オリエントスター・ダイナミック(どこがや)というモデルですが、1956年から発売されてヒットとなったモデルでして、現在でも同じペット名の復刻モデルなどが発売されている由緒正しいモデルです。セイコーでは、スーパーからマーベルの頃でしょうか。セイコーも好きですが、同じような雰囲気のオリエントも好きですね。この個体は耐震装置が付いているモデルです。ケースの状態などはステンレスのため良いコンディションですが、文字盤がいけませんね。

この当時の腕時計は非防水のため、殆ど3時の竜頭の位置が腐食していますね。手持ちのデッドストックには適合するサイズがありませんでした。

 

あらあら、アップルパイが来ちゃいますと作業は中止です。

 

 

いっそのこと、塗装で黒文字盤にしようかと思い、剥離剤を塗布しましたが反応がありません。はい、ここは塗装ではなくメッキだったんですね。素材は銅でニッケルのような下地の上に装飾メッキが施されていました。インデックスの金メッキは残したいので化学剥離は出来ませんから手磨きでシコシコ落としていきます。さて、どうなりますか? 取りあえず進捗があれば続きをUPします。

粗削りでメッキを落としたところ。銀色のメッキ層はニッケルよりは柔らかな錫のような感じ。これから、インデックスの稜線までヤスリの番手を上げて平滑面になるように研磨をして行きます。

 

自然乾燥塗料とも考えましたが、追加工やクリヤー塗装をすることを考慮して塗膜の強い焼付塗装としました。下塗りのつもりでしたが、丁寧に下地の研磨をしたことから、まずまずの仕上がりのため、これで良しとします。画像は仮にケースにセットをして針を置いたところ。やはり外周の秒インデックスと文字がないため殺風景な印象です。タコ印刷が出来ると良いのですけどね。インクジェットプリンターの簡易印刷も試してみましたが上手く行きませんね。特に金文字は再現できないし・・。どなたか裏技などありましたら教えて頂きたいものです。一見、セイコーマーベルにも見えますが、12時下のマークでオリエントと分かります。

 機械をオーバーホールしておきます。コンディションは悪くはなく、たぶん過去に完全分解はしていない(注油のみ)と思われます。サイズはセイコー・スーパーと同じ10型です。地板にテンプだけ取り付けて、振り石がドテピンの中央に来ているかを確認しておきます。

 

 カレンダー機構も何もないシンプルな機械ですので、部品点数は少ないです。超音波洗浄をしておきます。

 

 

ゼンマイの入る香箱車は小さいため、それではと、当時物の工具ピスターでゼンマイを巻いてセットします。

 

 

地板と受けの嵌め合いが硬いです。かっちり精度が良いというよりも、多少無理に押し込んでいるような感じで、輪列のホゾが入っているかの甘組みでは感触が分かり難く組みにくいです。

 

丸穴座はヤスリ掛けをされた形跡があります。工場で修正をしながら組んだようです。

 

 

耐震装置付(SHOCKRESIST)ですから60年代に入ってからの個体でしょうね。設計はオーソドックスというかセイコー・スーパーと極似していますね。チラネジ付のテンプと小さな耐震装置。

 

 

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手遅れ気味のPEN-FTの巻

2017年02月01日 20時45分14秒 | ブログ

昨日は季節外れの暖かさだったですね。ウォーキングで汗をかいてしまいました。しかし、油断は禁物、2月が一番寒いのですからね。で、最近PEN-F系が続いていますが、来ない時には全然来ないのに不思議ですね。この個体#3140XXはほぼ改良が終わった良い頃の個体ですが、とにかく保管が悪くてボディーに腐食が出てしまっていますね。点検すると、基本的には消耗をしていない良い個体だったはずですが、こうやって捨て去られていった個体が殆どなのでしょう。その意味では運の良い個体かも知れませんね。

腐食はトップカバーやタイマーにも及んでいます。

 

 

内部はややカビっぽい感じです。

 

 

人気の40mmですが、もったいないですね。かなりカビか発生していて、経験的に落ちないカビ痕が残るカビです。

 

一見、未分解のようですが、過去に修理歴があるようです。どこに手を入れたのでしょう?

 

 

トップカバーのカウンター窓の右横が盛り上がっている個体を見ますね。これは駒数板を留めるネジが駒数ガラスを突き上げているからです。これも設計の組図上ではクリアランスは確保されているはずですが、実際は、駒数ガラスの接着剤厚みやカバーの留めネジが巻上げレバー左に1本のため、下がってしまうのですね。Fでは、ネジ位置が右側面にありましたので、カバーが下がることは無かったのです。これも巻き上げを1回に改良した弊害ということです。

すべて分解をして洗浄を終えたところ。前期型と後期型の相違点は、ピンセット先のセルフタイマー固定の仕方。初期からいろいろな方法でセルフタイマーを固定していましたが、これが一番簡単な方法ということで最後に採用されたのでしょう。

 

前期型ではアルミ製のキャップであったボトムキャップですが、後期型ではPPのような軟質ビニールになっています。これにより本体の金型形状も変更されています。フィルム室から確認出来ますので、ご自分の愛機を確認してみてください。ついでに、アルミ製のキャップですと、接着剤が剥離して脱落している個体も多いですから、それも点検してください。

 

カメラに戻ります。シャッターユニットは特に問題はなく完成しました。本体に搭載します。

 

分解歴がありましたので、どこを修理したのかと思いましたら、プリズムを拭いてコーティングが傷になっていますね。これは仕方のないことです。外観からして保存状態が最悪でしたので、コーティングは劣化をして、拭き上げると無くなってしまいます。

 

しかし、このシャッターダイヤルは気に入りませんね。ちよっと探してこ・・

 

 

ご常連さんなのでサービスで交換をしておきました。

 

 

ハーフミラーは交換しました。本体は完成。トップカバーの腐食を磨いてあります。

 

 

40mmは現存数が少なくなっていますので、出来るだけ救済したいのです。絞り羽根の前後と前玉にカビがあります。これは残るカビですね。

 

ズイコーレンズは接着が強いので、溶剤を滴下してしばらく軟化を待ってから開けます。

 

 

レンズの清掃が終わって作業完了と思いましたら、オーナーさんから、「純正のレンズキャップが緩くて留まらないので貼り直してほしい」とのご要望があったのを思い出しました。ここは小学生の工作程度で出来ますので、みなさんでやって頂きたいのですけどね。まず、花文字部分がへこんでいて、これもテレンプ部分を緩くする要因ですので修正をしておきました。テレンプの寸法は幅3.5mm X 長さ150mmですので切り出して貼っていきます。

 

これですべて完了しました。手遅れ気味の個体でしたが、どうして中々ベッピンさんになりましたね。

 

 

もう一つ忘れていました。過去に消耗したH-D電池を利用した電池アダプター製作の記事をUPしたことがありましたが、それを覚えていらしてご希望になっていらっしゃいました。一応はお断わりをしていたのですが・・電極の金属はステンレスのため、硬くて加工に時間が掛かってしまい、工賃が見合わないのですが、覚えていたくださったので作って見ました。SR(LR)44電池の外径は一定ではなく、+側で11.50mm程度で-側では11.35mm程度です。出来るだけ挿入ガタを無くすために11.53mmで仕上げてありますがこれが難しいです。

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