今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

激しく落下のPEN-S3.5の巻

2016年10月18日 19時57分54秒 | ブログ

ご常連さんから、オークションで入手をされたPEN-S3.5 #1767XXが来ましたよ。シャッターが定番の不具合で不調なのと・・

 

駒数カウンター側が激しく落下して変形をしています。

 

 

駒数ガラス部分も楕円になってしまって、三次元的に変形をしています。修正をするにしても限度というものがあります。これは直らないのよ。しかし、駒数ガラスが脱落した状態では作動が出来ません。機能が回復すればよいとのことなりで何とか修正をしてみます。

とは言ってみたものの、全体に狂ってしまっていますので、どこから修正をしていけば良いか? 自動車の板金といっしょで、一番遠い部分から引っ張っていくのです。しかし、最後は駒数ガラスの◯ですが、これは真円にはならないのです。

こんなもんですね。何とか新しい駒数ガラスを入れて接着をしました。

 

 

この頃になるとシャッターのハウジングが黒アルマイトになります。

 

 

では、洗浄をして組み立てていきます。この個体はリールがEL(イージローディング)タイプになっています。上の駒数ギヤも真鍮製から樹脂製へと変わっています。

 

シャッターにも改良点があります。シンクロ接点は従来の接片ではなく、ポイントのような接点が追加されたタイプになります。その他、カム板の押えナットには回り止めも追加されています。

 

製造が新しいので摩耗腐食も無く、非常にきれいないユニットです。

 

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載しました。

 

 

裏蓋のモルト貼りと圧板の清掃をしておきます。リールを留めるナットも真鍮(メッキ)から樹脂製に変わっています。

 

落下の大きなダメージを受けてしまった個体でしたが、メカの状態は非常に良い個体でした。3.5モデルは希少なので大切にしてください。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 


追加で来た三光PENの巻

2016年10月15日 15時50分02秒 | ブログ

その前に。北海道のINOBOOさんが「国産名車コレクション」の創刊トヨタ2000GTを送ってくださいました。ありがとうございました。アマゾンではプレミア価格が付いて、以後のシリーズも入手は非常に困難ですが、地方の本屋さんには残っている確率が高いようです。創刊号1.299円で1/24スケールがヒットの原因ですけど、箱が大きいので置き場所が問題なのです。

例によって開梱しませんが、雰囲気は捉えていると思います。前期型がモデルですね。2000GTと言えばホワイトですが、ヤマハゴールドも渋いと思います。映画「007ジェームズボンドは二度死ぬ」は公開当時に見ていますが、オープン改造された2000GTがボンドカーとして登場しました。その時はジャガーEタイプかと思ったりして・・

 

遅れて来たPENマニアさんから怒涛の三光PEN攻撃が続いています。おっかけて来たこの個体は#1345XXと前回と少し後の個体。全体的にはダメージが少なく良い感じです。但し、ファインダーの対物レンズが脱落しています。前回の個体とファインダーを比較してください。縁が何となく丸みがあってシャープではなく、距離リングとの間に隙間が空きます。これがオリジナル。

 

シャッターを切ると猫目で止まります。

 

 

何故か、底部の開閉鍵などの腐食が進んでいます。ちょっと惜しいですね。

 

 

初期のファインダーブロックのモールドは、何となくシャープでなくキリッとしていません。どのくらい売れるか分からないモデルに金型代を掛けられなかったのかも知れませんね。対物レンズはガラス製はオリジナルだと思います。この頃は四隅の墨塗りがしてありません。遮光カバーは厚紙製です。

 

ファインダーをトップカバーに取り付けるとこのように斜めになります。これは部品の仕上がり精度が悪いためで、取付けネジにワッシャーを追加して水平になるようにしなければなりません。三光の初期の頃は、このような修正組みが必要だったので、生産数が上がらなかったのでしょうね。

チリ合わせをして本体との隙間も開かないようにしてあります。

 

 

私の勘ですが、このカム板は別個体のものでしょうね。まず、メッキの状態が良すぎること。シャッター側との嵌合がスムーズでなくきついこと。またバルブにするとシャッター羽根が解放で止まりません。ピンセット先のピンが曲がっていました。過去に良く知らない人が分解をしてカム板(シャッターダイヤル)を交換時に曲げてしまったのではないのかな?

今回の個体は右側で前回の個体は左側です。裏蓋の圧板の取付を良く見てください。バネの形状が左右逆になっていますね。右側が殆どのもので、稀に左側のものも存在するのを確認しています。「なんで?」知りません。

僅かな製造時期の違いで変更点があります。今回の個体は右側ですが「MADE IN JAPAN」の型押しが無くなっています。リベットの形状から、参考時代の裏蓋には間違いありませんので交換ではないでしょう。右側の赤い汚れは洗浄しましたが落ちません。この頃は貴重品のカメラに盗難除けでマジックで名前を書いてある個体がありました。


訳あり販売の三光PENの巻

2016年10月14日 19時38分31秒 | ブログ

今日は忙しかったです。外回りから戻って、久しぶりに天気が良いので、車のフロントワイパーの塗装をしました。前回は内側をマスキングしましたが、今回は手抜きでそのままプラサフと艶消し黒塗装です。今回は自動車用缶スプレーを使いましたが、やはり硬化が早いようです。艶も新品を用意したNWB純正ブレードとほぼ同じで良い感じです。これで完了と思ったら、今度はリヤゲートのダンパーが利かなくなりました。ダンパーは新品にするしかないですね。車歴の古い車はいろいろ出て来ます。

では本題です。遅れて来たペンマニアさんが、中古カメラ市で「訳あり品」として出ていたものを部品取りにと入手されて来ました。訳ありの理由はレンズの後玉が曇っているというもの。PENの場合はコーティングが曇るので、ほとんど救済不能ですが、清掃してみると・・曇りの輪郭は残りますが、まずまずの状態となりました。

それでは部品取りからオーバーホールに昇格して作業をすることにします。

 

 

しかし、この個体は分解機で(ほとんどそうだが)シャッターを作動させると、嫌な金属音がします。シャッター羽根に錆が発生しているのと、ヘリコイドの分解時に工具を滑らせていますね。

 

分解機なので部品の入れ替えもあるのを前提に見ていきます。この個体は#1284XXですが、ドライバー先のスプロケット軸のネジは正ネジです。もう僅か若い個体では逆ネジも確認しています。シリアルと変更が逆転しています。まぁ、シリアルは整数順にはなっていないので・・ピンセット先のギヤは以後と同じ段付きですが、ウェーブワッシャーは入っていません。対角2孔加工も無いので、分解時、工具が掛かりません。最後は、巻上げダイヤルカバー(樹脂)は初期の熱カシメからネジ留め式に変更されています。

シャッターは一度も分離されていませんでした。バックハウジングの留めネジが1本脱落しています。この頃は、ネジロックが施されていません。塗布しにくい構造です。

 

ファインダーの樹脂がやけにきれいと思いましたら・・対物レンズはガラス製で、カバーはアルミ製。オリンパス工場に生産が移った三光以後のものですね。

 

まっいいや。洗浄して組み立てていきます。

 

 

シャッターの状態は悪いです。シャッター羽根に錆と、スローガバナーやその他の作動部分がギシギシな感じです。洗浄注油をしながら組んでいきます。画像はシャッター羽根を清掃して組むところ。

 

完成したシャッターユニットの作動音は正常になりました。本体に組み込みます。

 

三光でこれはおかしいですね。この頃は黒の遮光紙でしょう。

 

 

しかし、調子は非常に安定して良いです。シャッターを分解していますので、ストロボ接点の導通を確認のためストロボ発光テストをしています。

 

ヘリコイドグリスを塗布してレンズをセットします。

 

 

希少な三光PENなので、部品の入れ替えを受けながら生き延びるのは仕方のない現象でしょうね。それをオリジナルか否かが分かる人間が段々いなくなるということです。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


KONICA EYE をレストアするの巻

2016年10月09日 23時23分33秒 | ブログ

時計の方が部品の問題やらでトラブって進みませんので中断して来ました。珍しいKONICA EYEが来ました。オーナーさんは、入手前にメンテナンス費用のお問合せを頂いていたりで、やっと?2台も入手されて来ました。しかも箱付きですね。しかし、どらちもあまり状態は良くなくて、EEが利いていないようです。外観の程度から左側を主体に直したいと思います。

発売は1964年だそうで、右が発売年で程度の悪い左は翌年の製造です。ASA感度表示の透明樹脂レンズが欠落していますので、左から調達します。

 

裏蓋は巻き戻しダイヤル下のボタンを押すと開きます。

 

 

ハーフですので眺めはPENと似ていますね。

 

 

問題のセレンはどちらも弱っていて、テスターで測定すると僅かに起電している程度です。プログラムEEカメラなので露出計が動かないのは困る。

 

セレンのサイズはPENとほぼ同じぐらいですね。流用をするか、EYEでセレンの生きているものを在庫から探してみるか・・

 

前板にレンズ機構が集約されています。口径の大きな1.9の明るいレンズ。

 

 

連休最後の日は頑張ってやりましたよ。結局のところ、メインにした個体も決して状態は良くないので、良いとこ取りのニコイチということになります。しかし、PENの設計が究極の合理設計とすれば、その対極のような作りですわね。ハーフである必要がないような作り込み方。ビハインドシャッターは作動が緩慢です。フライホイールの動きなどが悪いです。

すべて分解をして洗浄のために、劣化したモルトなどをきれいに取り去っておきます。

 

 

裏蓋のモルトは四辺ですので面倒。

 

 

 かなり汚れていた本体を洗浄のうえ、組立をしていきます。スプロケットは通常の下側の片側設計。スペースが欲しかったのでしょう。

 

露出計の調整抵抗が見えないと思ったら、裏側に半固定抵抗がありました。調整がしにくくありませんかね?

 

完成したシャッターユニットを本体にドッキングします。レンズ回りの遮光モルトを貼っておきます。

 

ここのバネは本体側にセットしておきます。

 

 

巻上げとシャッターの調子を見ています。

 

 

ファインダーの対物レンズを清掃するため、軽く触ったら「ポロッ」と角が欠けてしまいました。過去に衝撃が入っていたりで、時々ありますね。部品取りがあってよかった。

 

清掃が終わったファインダーを本体に取り付けました。

 

 

距離リングなどの状態は部品取り機の方が程度が良いので、レンズも含めて程度の良い部品を選んで作ります。

 

前板(レンズ)が付いて形になって来ました。

 

 

問題のセレンですけど、当方に複眼レンズにキズがあるストックがありましたのでセレンを移植して使うことにします。

 

露出計の針が動いていますね。

 

 

底蓋は1つは手遅れ状態ですので、手前側を使いますが、中央がへこんでいますね。洗浄する前は気が付きませんでした。修正をして使います。

 

底部のチャージリンケージ部にグリスを塗布して底蓋を仮にセットしておきます。(シボ革を貼るので)

 

欠落していたASA窓は部品取り機から調達しましたが、樹脂の劣化や塗装ハゲなどで良い状態ではありませんでしたので、塗装と磨き出しをして仕上げてあります。

 

 キヤノンのG17に似た裏蓋のモルト形状ですね。本体に取り付けます。

 

 

フィルムレールも太くてがっちりとした設計ですね。非常にきれいになりました。

 

 

「小型で軽くデラックスな高性能ハーフサイズカメラ」と取説に謳われていますが、付属品のストラップもPENより豪華?なものが付属しています。取付け先端の環部は回転する手の込んだ作りです。心材に組紐が巻かれたストラップはPENのように経時硬化せず、現在でも全く不都合がありません。

樹脂製のフードも付属しています。収納時は逆にすればレンズキャップが内側に嵌ってコンパクトに収納が出来ます。

 

「フィルム感度目盛窓」の接着画像がありませんでした。露出メーターを横回転させて、そこにASA感度目盛りのシールを貼るというアイディア。

 

「元箱付きフルセットで仕上がりましたね。F1.9の大口径、6枚構成のヘキサノンレンズは大型カメラに負けない模写力をもち・・」と書かれていますので、レンズには自信があるのでしょう。メーカーが変われば設計思想も変わるという見本みたいなハーフカメラでした。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


戻って来たPENの巻

2016年10月06日 10時20分03秒 | ブログ

すみません。裏で難儀な時計をやっておりまして・・先日仕上げたPENが戻りました。オーナーさんがレリーズボタンの奥のネジを回してシャッターの切れる位置を調整したとのことですが、ドライバーを強く押し込んだためにシャッター側の受けが変形を起こして巻き上げると同時にシャッターが切れる状態に陥ったようです。

PEN-Sでは多少は改善されますが、PENのレリーズ機構はブリキ細工のような貧弱な部品で構成されていて、無理な力を掛けると簡単に調整が変わってしまうのです。変形部品の修正をしてから組み直しをしたところ。PEN-Sに比べて、レリーズシャフトが長いのも不安定な作動の原因。

ボタンでは正常にシャッターは切れても、レリーズを使うと不具合が出るケースが多いです。工場で調整済みのレリーズボタン高さを変えると、別の調整が狂う場合がありますので、安易に調整はしない方がよろしいです。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/