今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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名前入りの三光PEN

2012年04月15日 18時27分52秒 | インポート

Dscf103024 ご常連さんですが、三光PENと共に時計が入っていました。ご自宅に古くからあったそうで、シチズンのデラックスですね。このモデルは1958年に「高精度の極薄型」を目指した設計として発売されたモデルです。さすがに同時期のセイコーマーベルやクラウンよりも薄く仕上がっています。機械は19石、21石、23石がありますが、届いたモデルは19石ですね。しかし、ケースは20ミクロンの金めっきを施されています。後ろの2つは私の所有機で、左側のベルト付きは19石の未使用新品です。ベルトはすでに劣化をしており、実使用はきびしいですが。右側は21石の特殊文字盤モデルです。昭和30年代のお洒落な雰囲気が良く出ているモデルです。

Dscf103167 では、本題です。しっかりとした劣化の少ない三光PEN #1346XXですが、トップカバーには、所有者の苗字が彫られています。今となっては残念な気もしますが、当時は、PENと言えどもカメラは貴重品ですから、盗難時の目印に名前を彫ることは普通に行われていましたね。

Dscf103368 本体からシャッターユニットは分離されていないようですが、前面のヘリコイドやレンズ部分は分解を受けています。しかし、下手くそな分解ですね。ナットを外すためにキズだらけにしています。ヘリコイドのグリスは普通のグリスのようですね。シャッター本体に流れ出しています。

Dscf103416 シャッターですが、Bバルブが利きませんね。ピンセット先のレバーがシャッター羽根が閉まるのをロックするのですが、バネの張力劣化により動きが悪く、シャッター羽根をロックすることが出来ません。

Dscf103588三光PENの頃に良く見られるのはスプロケット軸の上側の受けが緩んでいますね。工具を使わずピンセットで回ってしまいます。すべて分離した後、洗浄します。

Dscf103679洗浄した本体に組立をして行きます。スプロケットのクラッチは、ご覧のようにヤスリ掛けをされています。クラッチのプレス打ち抜き方向にバリが出てスプロケット軸のスリットに入らないものか、スリットの幅が狭くて収まらないための処置でしょう。どちらにしても、部品精度や公差が適正でないことによる不具合。組立現場で現物合わせでヤスリ掛けをしていたのでは、組立が軌道に乗るわけがありません。

Dscf103786  スプロケット軸とスプール軸を組んでいます。この頃は、駒数ギヤは初期の物とは異なり、その後のタイプと同様な形状になっています。但し、組立用の2孔はありません。また、ウェーブワッシャーも入らないのが特徴です。巻上げダイヤルカバーは熱カシメタイプから、それ以後のビス留めタイプに変更されています。この部分の変更は、比較的早く行われたことが分かります。

Dscf103759_2 途中画像撮り忘れました。三光PENとしては保存状態は良好で、特にレンズやファインダー対物ブラレンズなどは全くキズの無い状態で、ファインダーブロックもこの頃の個体に多い樹脂の劣化による白濁もありませんね。後期のPENと部品が入れ代っているのかとの疑問も持ちましたが、各部の特徴から、まさしく初期型のそれでした。ただし、ピントは全く不正確に調整されていました。また、良く間違えているのは、ヘリコイドの二条ネジの入れ方です。無限まで締め込んだ状態で、絞り表示が上面に来るようにします。彫り文字が無ければ最高の1台だったのですけどね。米谷さんのサインなら良かったですけど・・