女性はPEN-Fがお好きですね。ゴールデンウィークに撮影旅行をされるご予定ですが・・ちょっと待ってよ。最初の印象は、外観は#2877XXでそこそこきれいなんですが、巻上げが異常にガチャガチャ。シャッターの作動タイミングも気になります。そもそも、オーナーさんの好みかも知れませんが、レリーズボタンの位置が極端に低いのにボタンと内部のシャフトとのクリアランスが大きくてボタンがカチャカチャ遊んでいる。経験的にこのようになる場合は、シャッターユニットやリンケージ関係をニコイチのように製造時期の違うユニットを組み合わせている場合になります。PEN-Fの場合は、レリーズ関係は製造時期によって細かな部分を含めると、何度もの変更を受けているのです。トップカバーを開けてみると・・おっと、思いっきり作られた個体ですね。太っといリード線を使ってね。
裏側から見ますよ。やはりちょっと変ですね。この本体ダイカストは初期のタイプですね。リンケージも28万台のものではありません。シャッター幕を見ますと、初期の特徴である、表面に光沢感のあるものが付いています。製造月日から推測すると#115000付近の個体と思われますが、巻上げレバーのクラッチなどは変更後が付いていますので、或いはトップカバーと同じ28万台の部品を流用されたのかも知れません。左側のギヤ受けを留めているビスはオリジナルではなく、全体的に部品を寄せ集めて組まれた個体と思いますね。う~ん、このような個体は女性のところへ行くことが多いように感じます。まず、このガチャガチャ感は有りえないでしょ。相性(製造時期)の異なる組み合わせでは、良い状態に出来るかはやってみなければ分かりません。メカの苦手な女性だと、こんなものと思ってしまうのかなぁ? これ、どこで買ったの?
要するにでっち上げられた個体だなぁ。分解して状況を確認していきます。画像左の板止爪を留めている+ビスはオリジナルではありません。バネも作ったものでしょう。ピンセット先の地板に半田を盛ったところがありますね。これは、巻上げレバーが強く当っていたため、金属疲労によりクラックの入っている個体は多いですが、それを補強したものでしょう。
裏蓋のカギ板の作動が重く、ラッチの飛び越しを起こしていますね。すでにそれを修正するためにシボ革を剥離してカギ板を曲げた形跡がありますが、ペンチのキズを付けただけで治っていません。そもそも、この汚れをきれいにしなければ調整以前の問題でしょう。
取りあえずシャッターユニットを洗浄してあります。このスローガバナーは初期のもので、すぐに設計変更をされています。ピンセット先の形状が異なります。とても28万台ではありません。そもそも、シャッターバネも分解を受けていますが、テンション調整が不良で、スローカバナーを押し切らず、止まってしまいます。まさか、これで撮影していませんでしたよね? シャッター幕を見てください。初期の製造個体にだけ使用されたエッチングの肉抜きのないタイプですよ。
で、ブレーキを分解してみると・・あらら、ピンセット先がブレーキのOリングホルダーですが、Oリングは影も形もありませんよ。ブレーキ無しのカメラかぁ。Oリングのゴムが古くなって硬化すると固着して作動に不具合が出ますが、それを回避するためにOリングを抜いてしまったということです。組立もすべて緩んでいまました。
錆びていたOリングホルダーを研磨清掃してから、新しいOリングをセットして組立てます。
何とか、この状態まで組み上げています。シャッターユニットは調整をしてありますので、スローも正確に作動しています。
ゴールデンウィークにお使いなる予定のご様子ですが、この個体は自然故障機ではないですから仕上げるのは大変なんですね。カメラを選ぶ時にはもう少し良く確認をしましょうね。と言っても無理でしょうかね。女性のカメラですから治してあげますけど・・
今日は外出していましたので1枚だけUPします。では、前板ですが、#115000付近の個体ですから、リターンミラーは前端2ヶ所にミラーの脱落防止ビスがあるわけですが、この個体はビスが無い以後のものが付いていますね。取付けのビスを確認するとネジロックが緩められていますね。と言うことは交換されたということです。するとピントも変わってくるのですがね。このビスはネジロックを塗布しておきませんと必ず緩みますが、案の定、片方がプラプラです。リターンミラーを駆動させるユニットですが、油汚れが無く、不自然にきれいでしたが、こちらもネジロックが緩められた形跡があるので信用できないなぁ、と分解です。↑のビスは裏から緩み止めのポンチ加工がされていますが、それでも分解されたようで、途中まで抜けています。締め込んでポンチをしておきます。隣に見えるバネですが、先端が故意に曲げられてリベットに巻きつくようになっていますね。???このバネは何のためにあるのか分かっているのかしら? このような個体は信用が出来ませんので、細かなところまで分解して確認する必要があります。
なんだかんだ組みました。全反射ミラーは交換しています。リード線は交換でターミナルも酸化皮膜を落として半田付けをしてあります。シャッターダイヤルですが、組立の留めビスを締め込むと回転が重くなる。カムシャフトとダイヤルを繋ぐジョイントが圧迫されてあがきが無くなっているためです。工場で組まれたままの構成であればあり得ない。シャッターダイヤルを体裁のきれいなものに交換されている可能性が高いですね。
組み上がって改めて眺めてみると・・きれいですねぇ。外観がきれいになるように「作った」個体ですから当然ですが、これでは女性は買っちゃうでしょうね。調子よく組んでありますから大丈夫ですよ。あとは一緒に来ているレンズのメンテナンスをして終わりです。この38mmは2.8ですね。セットもののレンズだと思いますが意外に珍しいですね。もう一つは普通の38mmですが、どちらもちゃんとF用を選択されています。FT用でも構いませんけど、拘りでしょうかね。ゴールデンウィークに活躍してくれることを願います。