少し間が空きました。じつはすごい個体を手掛けていまして手が離せなかったのです。メーカーの彫刻文字が入った極初期型と思います。シリアルはなんと#30008XX ですよ。しかも非常にきれいな個体です。あるところにはあるものですね。
一通りのO/Hはして行くのですが、問題があります。それは露出計が不動ということ。この頃の露出計はCdsが不良となっているものがありますが、そのような症状ではなく全く作動しない。点検をして行くと、あ~これかな? 電池室に無数のクラックが入っています。
トップカバーを分離して点検すると・・電池室の天井が抜けて盛り上がっていますね。初期の樹脂は劣化によって破損することがあるのか、或は規格外の厚みの厚い電池を入れて無理に電池蓋を閉めた? このような場合、接着をしても電池蓋のネジの力は強大ですので簡単に接着は外れてしまいます。
トップカバーとの間にスペーサーを入れて誤魔化しておく方法も考えましたが、大変貴重な極初期型ですので、ちゃんと直しておいた方が良いと考えました。幸い、メーターとCdsは生きていましたので、私物のストックから樹脂成形の本体を探して来ました。ただし、製造時期によって微妙にネジ規格の変更や形状の違いがありますので、それらを調整して組んで行く必要があります。当時のローライSSでしたら問答無用でユニット交換ですね。しかし、それが出来ないので作るしかありません。
右が今回の個体に付いていたメーターユニット。左の後のものと微妙に仕様が変わっています。
メーターカバーは本体と位置決め凸が合わないため後期のものを使いました。追伸針を動かすリンケージの力が掛かるので、カバーの固定は完全でなければなりません。
作動テストをしてみます。正常に作動します。では、他のメンテナンスを終えた本体に組み込んで行きます。
梅雨の晴れ間で蒸し暑くなって来ましたね。我が家の買い物専用の軽がエアコンが利かなくなっていたので冷媒ガスとオイルのチャージ作業をしていました。2シーズンはもったのですが、ガス漏れはスズキがリコールもしているようですから持病で減ったら入れるで使うしかないですね。お陰で先ほどのスーパー買い出しは快適でした。
で、露出計ユニットですが、製造時期によって細かな規格の変更などがありまして、細かくは書けませんが大人の事情でメーターのカバーはオリジナルの方に変更しました。ゼロ位置のオレンジ指標はガラスの分離の時に使う溶剤で必ず塗装が剥がれますので再塗装をしてあります。実際は画像よりは濃い色で調色をしてありますが、市販品なら国電中央線の101系、朱色4号パーミリオンオレンジがほぼそのまま使えるでしょう。
沈胴の摺動フィーリングが良くないので分解をして行くと・・あっ、フェルトが剥がれないよ。
以前にも記憶がありますが、極初期型はフェルトとスペーサーを接着してあるようです。なんでこんなに難しい組立をするのだろう。貼って組み立てたフィーリングが製品規格に達しない時はまた剥がすの? 前回の時にも書きましたが、この部分は内燃機関のピストンとピストンリングの関係に似ていて、ピストンリングが固着すると圧縮漏れが起きるように、フェルトが自由に動けないと長期的に見た時、摺動フィーリングが維持できないのではないかと思います。それで、以後の組立では接着しないようになったのかな? 知らんけど・・さて、フェルトに接着剤が付いていて溶剤で溶けにくいので再使用が出来るか? また問題が・・
この個体は過去に分解歴がありますが、シャッターやレンズは分解されていませんね。ヘリコイドグリスは組立時のままで完全に酸化しています。レンズも汚れが多いですが、カビは無く保管は悪くなかったようです。
内部は極初期型の眺めです。各部品は以後の個体と微妙に異なります。
極初期型の中でも外観にキズが無く良いコンディションの個体です。沈胴もスムーズでレンズの回転もダンパーが利くように組みました。私も欲しい個体でした。
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