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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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百番台の三光PENの巻

2022年04月13日 23時00分00秒 | ブログ

大学院生の方がフリマサイトで三光PENを入手されて来ましたが、シリアル№はなんと#1001XXです。過去には#1000XXの個体も手掛けたことはありますが二桁台の個体は生産試作や有力販売店への営業資料など実際には撮影が出来ない個体に振り当てられていたケースが多いので、実際に市場で販売された個体とすると貴重な個体と思います。状態はかなり悪いですが、資料的価値は大きいと思われますので、分解しながら特徴を書いていきます。

シャッター自体は故障するところが無いので作動はしていますが、内部は汚れ放題ですでにジャンク状態となっています。

 

本体内部。やはり汚れ放題ですが、スプールの樹脂割れなどはなく、思ったほど悪くはないと思います。

 

底蓋の底部に腐食がありますね。ここが腐食するのは珍しいと思います。開閉鍵はバネが伸びてプラプラ状態です。

 

レンズの絞りリングも腐食が進んでいます。

 

 

ダイカスト角は塗装が磨滅して放置されたため腐食が進んでいます。

 

 

フィルムの巻き戻し軸の先端が開いていますね。三光以後のPENとは巻き戻しノブの設計が全く異なり、ダイヤル単体も無垢の部分が多いため重いです。

 

三光の初期は駒数カニ目ネジは正ネジです。過去に分解傷がありますね。

 

 

トップカバーを分離しました。カニ目ネジは外されていますが、ファインダーは分解を受けていません。この頃はダストカバーは黒厚紙ではなく、ちゃんと金属板になっています。トップカバーの固定ネジの高さが合わずワッシャーが2枚入っています。まだ、部品同士の嵌合に問題がある頃です。

 

駒数ギヤはフラットのままで後のウェーブワッシャーは入りません。巻上げダイヤルカバーは以後のネジ留め式ではなく熱カシメ式です。

 

 

オリジナルのままのファインダー。プラレンズの状態は良いですね。エポキシ接着剤はクリーム色を律儀にこんもり塗布しています。以後は茶色の接着剤になります。

 

トップカバーを分解されていた目的は駒数ガラスを交換するためだったようです。残念ながらオリジナルではありません。分解傷も多いです。

 

三光の頃はスプロケット軸とスプール軸の下ナットが緩まない個体が多いです。しかも、スリ割りが以後のものより細いので、通常のPENに合わせた工具が使えません。何とか分離しました。洗浄をしたところ。

 

裏蓋の開閉鍵は以後の部品より加工が荒いです。上下に入るバネが完全にヘタっています。修正をして組み立てます。

 

シャッターはシャッター羽根に腐食でもない限り動くのが普通ですが、この個体はチャージレバーに変形があり思わぬ調整に時間が掛かりました。PEN-Sなどのユニットより古い設計ですから、部品点数の割には小さなバネが多用されていて、老眼の目には組立は苦手です。

では、シャッター羽根を組み込んで組み立てて行きます。

 

 

シンクロ接点の調整。画像は接点が接していますのでギャップを取ります。

 

 

初期型は対物レンズが樹脂製ですが、この個体は接眼レンズも樹脂製でした。当初、未分解と思いましたが、レンズにすり傷が多く過去に分解清掃を受けているようです。この頃の樹脂レンズは樹脂に硬度がなく、不用意に拭き上げると傷を付けてしまうので注意が必要です。清掃などは考慮していなかったのでしょう。シューの機械加工も、何となく角張っていて試作部品の雰囲気があります。取付けネジは頭の小さな普通の皿ネジですが、ファインダー本体が樹脂なので強く締め込むとネジ穴にクラックが入ります。後に頭の大きな鍋ネジになります。

駒数針は金色です。針の下にはウェーブワッシャーが1枚だけです。

 

 

レリーズボタンのリターンバネは初期型はバネの線径が細く条数が多いので弱い傾向にありますが、正規の部品だけでは弱すぎたのか、バネが追加されています。

 

レンズの後玉はお約束のコーティング劣化です。今回は清掃のみでオリジナルとしておきます。

 

片耳の吊環はねじ込むと斜めになってしまいます。0.1mmの調整ワッシャーを製作して正規の位置で止まるようにしてあります。三光ですから撮影用に専用ストラップを付けます。

 

内部はこのようになっています。この時期の個体でスプールにクラックが入っていないのは珍しいです。フィルムレールも磨いてあります。シャッターユニット固定用のネジは頭が小さいので緩みやすく、後に頭の大きなネジに変更されます。

 

元々の状態がアレでしたので結構時間が掛かりましたね。とりあえず貴重な初期型を救出できて良かったです。

 

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