ぐしゅん! いえね、昨日から突然鼻がムズムズして来て、鼻水が出るんですね。以前からアレルギー性鼻炎の持病はあって治療はしているのですが、花粉症のような? 症状は初めてなんです。今年の春も寒い日が続いていましたが、気がつけば、まもなく桜が咲く時分ですよね。
で、本題です。お知り合いから遺品として頂いたカメラだそうです。PEN-FT #1262XXと初期型(1967-2製)ですが、外観は悪くはない個体です。カメラボックス保管ということで湿気はあったようですよ。電池室周辺の腐食が激しく、グリスも完全にカラカラの状態です。
過去の修理歴ありとのことでしたが、基本的なところは何も手を付けられていません。接眼プリズム周辺などのモルトは交換されていますので、限定の修理でしょう。しかし、当時、壮年の方が購入された個体とすれば、ご遺品として出て来る個体も多いのでしょう。私も仕事柄100台以上のFTは所有していると思いますが、この先どうしようと思うこともありますね。正直なところ・・
電池の液漏れがあったのでしょうね。この周辺が激しく劣化しています。電池室の片方のネジは規格外(頭大)で、絶縁用のビニールが挟んであります。修理はこの部分でしょうね。
湿気の管理が出来ていなかった個体は、裏蓋のヒンジピンが錆びているものが多いです。錆で太ってしまい、簡単には抜けなくなります。まぁ、ここを抜いて修理をする人はあまりいないでしょうけどね。
初期の生産に不慣れな頃は、「剥がれないように」「抜けないように」と接着剤を必要以上に多く使用している傾向にありますから、すべて接着剤を落して洗浄することが大変です。まぁ、基本ですから手を抜かずにゴシゴシします。
残念ながら、かなり腐食が進んでいます。電池の液漏れガスが上に上がって来て腐食させたものでしょう。
ちょうどピントが外れていてすみませんが、電池室横のスローガバナーも腐食が進んでいます。中央奥の青白い緑青を噴いたような部分がアンクルで、スローガバナーでは一番大切なところです。これは動きませんよ。
本来は交換のケースですが、何とか動かしています。前板関係を仕上げて組立。
巻上げのゴリツキも改善はしていますが、初期型はまた独特なフィーリングがあるのです。擦れるようにズーっと巻き上がってコクッという感じ。しかし、悪い感触ではありません。スローも1秒は何とか切れていますが、信頼性は不明です。
今日は外出していましたので作業は進んでいません。昨日の残り画像。露出計ユニットを清掃しておきます。初期型としては湿気による素子の外観劣化は少ない方です。まぁ、作動しているだけでも希少ですが・・。初期はCds素子を抑える板バネの形状が異なっています。
ハーフミラーは新品と交換をして露出計ユニットとシャッターダイヤルを連動させます。初期の頃のメーター線は可動させる必要から極細の芯線に繊維を巻きつけたものを使用しています。そのため、トップカバーの内側には絶縁用のニスが塗布されています。現状では、この繊維が解れてきびしいところに来ています。この線はすぐに柔軟性のある細いビニール被覆線に代わっていて、カバー内のニス塗りも省略されています。調整抵抗は半固定抵抗で、状態は悪くはありませんね。BOX保管が幸いしたのでしょう。
良々観察をすると。。アイビース枠は一度破損(左)していますね。器用に接着補修をしてありました。元のオーナーさんの愛情が感じられる部分です。しかし、強度はありませんので、アクセサリーシューの取付けはお止めください。
特にセルフタイマーやレバーの交換は受けていないと思いますが、レバーがお辞儀をしていますね。
これで調整一杯ですがまだ水平になっていません。製造初期の頃は、各部品やユニットの寸法精度や公差管理が甘く、組み合わせのセットでは調整が取れないものがあります。仕方なく良品として通したものか? 良品の範囲だったのか? 知る由もありませんけどね。
こちらも良く見るとPEN-FTの凸角に向かって凹んでいるように見えます。後天的に凹ましたものか? 私には、プレスの絞りじわのように見えます。
軽く修正をしておきました。まぁ、初期型の突っ込みどころ満載という個体です。しかし、機械の疲労は少なく、大切に扱われていたであろうことは感じられます。次の世代に受け継がれた幸運な個体ということが出来ます。