東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2020年05月12日 | Weblog

 作家の出久根達郎さんは少年時代、井伏鱒二のことが好きになり、その作品を書き写していたという。「読むだけでは飽き足らなくなった」▼アイドルだったのだろう。自分もそうなりたいとあこがれ、手本とする。誰にもそんなアイドルがいる▼リトル・リチャードが亡くなった。八十七歳。若い人にはなじみはないか。それでも実は身近な存在かもしれない。好きなミュージシャンがいるとする。その人のアイドルは誰か。影響を受けた人物は誰か。それが分かったら、今度はそのアイドルのアイドルを探す。三、四回さかのぼれば、おそらくは、この人にたどり着く。黒人と白人の垣根を越えた熱狂の音楽、ロックンロールの創始者の一人である▼十四歳のポール・マッカートニーが出場したのど自慢。歌ったのはその人の「のっぽのサリー」だった。ボブ・ディランは高校の時、将来の目標として「リトル・リチャードと共演する」と書いた。ジミ・ヘンドリクスは言った。「リトル・リチャードが歌うようにギターを弾きたい」▼デビューは一九五五年。黒人で同性愛者。今よりはるかに生きづらかっただろう。抑圧と苦悩からあの叫びの音楽は生を受けた▼「感じるがままに歌え」。その音楽は時代とともに裾野を広げ、形を大きく変えながらも今も世界中で流れている。若者の憂鬱(ゆううつ)を少しでも忘れさせようと叫んでいる。

 
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】