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今日の筆洗

2020年05月04日 | Weblog

 作家の梶井基次郎は第三高等学校で二度落第している。どうしても卒業したかった梶井は教授をだますことを計画する。教授にいかに自分の病が重く、かわいそうな苦学生かを切々と訴える。泣き落としは成功し卒業できた▼帝大時代の太宰治が受けた卒業口頭試験は変わっている。「学校に来ていなかったようなので学問の質問はしない。ここにいる三人の先生の名前が言えるかね。言えたら卒業させてあげる」。太宰は一人として言えなかった。名前を知っていたとしても太宰なら意地でも答えなかっただろうというのがその師井伏鱒二の見立てである。太宰は除籍処分となった▼当初六日までだった新型コロナウイルスの緊急事態宣言は解除とならず、一カ月程度延長される見通しとなった。われわれは卒業試験に失敗したらしい▼いいところまではいったはずだ。新規感染者のグラフはなだらかながら下降線を描いている。人との接触を八割減らすという難問はクリアできなかったが、自己採点ながらかなり向上したのではないか▼落第にうめく人もいるだろう。もう疲れたという声も聞くが、感染抑止という、この卒業試験だけは何としても合格しなければならぬ▼泣き落としは通じない相手だが、梶井の「土性っ骨」の方に習うとするか。落第したのは日本国民全員である。落第生同士励まし合い、追試に臨むしかない。

 
 

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