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今日の筆洗

2020年05月22日 | Weblog

 「乾坤一擲(けんこんいってき)」はのるかそるかの勝負を言う。乾坤は天と地、一擲は「ひとなげ」すること。由来をたどれば、擲(なげう)つのはこの場合、サイコロであるそうだ。天と地どちらの目が出るかの賭けである▼社会的地位を擲つことになると知っていても、サイコロを転がしてしまう人がいるようだ。ギャンブルによほど取りつかれてしまったか、そもそも価値判断ができなくなっているか。あるいは両方か▼いずれにしても、社会正義を預かる職には、ふさわしくない資質であろう。東京高検の黒川弘務検事長が、賭けマージャンの事実を認めて辞職することになった▼起訴権を独占し、高潔が求められる組織の幹部がこの自粛生活のさなかに、というだけでも、検察に対する信頼は揺さぶられよう。ほかならぬ、検察官の定年延長問題の渦中の人だ。すでに世の中の目がかつてないほど厳しくなっていた時期のマージャンという。職を賭した行為であると、分からないはずはなかっただろう▼先例のない閣議決定で批判を浴びることになっても、政府が黒川氏の定年を延長したのは、余人をもって代え難い資質ゆえであったはずである。こうなってみると、見込んだのは高潔と異なる資質ではなかったかと思わされる。任命責任にも今後、厳しい目が向けられよう▼「擲」には、擲(なぐ)るの意味もある。政権への信頼を大きくゆさぶる一擲である。

 
 

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