大槻雅章税理士事務所

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№102 租税回避策の開示義務

2017-07-05 | ブログ
2017.06.01 租税回避策の開示義務

企業が税率の低い国や地域に利益を移して税負担を軽くすることを租税回避といいます。また、税率の低い国や地域はタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれ、租税回避の為の節税商品のことをタックスシェルターといいます。

節税や租税回避は法律上は適法なので脱税ではありませんが、通常取引から逸脱した異常な租税回避行為は税務当局に否認されます。

例えば、否認される租税回避策として、海外子会社の損失を日本の親会社に付け替える、価値の評価が難しい知的財産権を親会社が子会社に格安で譲り渡す、タックスヘイブンに設立した実態のないペーパーカンパニーに利益を移したりする仕組み等があります。

日本でも、租税回避策を実行したら、そのスキームを税務当局に開示して報告すべしとの制度が来年度の税制改正で立法化され、2018 年度から実施されそうです。開示義務違反には罰則があり、租税回避策を作成する税理士や租税回避策の提供を受ける企業が開示義務の対象者になります。

日経新聞の報道によると、①租税回避によって高額な成功報酬を受け取る、②納税額を減らすために税務上の損失を生み出す、③提供節税策について守秘義務が約されている、というような3つの基準のどれかに該当するとその節税スキームは開示義務の対象になるようです。

類似の開示義務は国際的には制度化されており、米国、英国、カナダなどいくつかの国では既に導入されています。

例えば、米国の制度導入は1984年で、2004年には開示義務に対するペナルティが大幅に強化されています。

英国では2005 年に開示義務が導入されています。開示義務の対象となるのは、①租税上の便益を生むスキーム、②租税上の便益がスキームの主要な利益、③金融商品または雇用関係商品、の3つの要件を満たすものとなっています。開示義務違反には金銭的ペナルティが課されています。

カナダでは1989 年に開示義務が制定されています。カナダの制度では、開示義務を履行しない場合には、否認の対象となるか否かに関係なく、税効果を認めないとされています。

( 各国の開示制度は、財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成28 年第1号、今村隆17頁~46頁参照。)

このように日本における租税回避への対応は国際比較で立ち遅れており、租税回避の疑いのある取引についての開示義務を課す立法が必要とされているわけです。


(完)


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