大槻雅章税理士事務所

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№176 インボイス制度における振込手数料相当額の値引きの実務

2023-10-28 | ブログ
2023.10.27

前回の記事で、税込1 万円未満の振込⼿数料の値引きは「適格返還請求書(返還インボイス)」の発⾏が免除されることを書きました。
インボイス制度が施行された令和5年10月1日以降も振込手数料相当額の値引きに関する実務上の質問がありましたのでまとめさせていただきます。

1. 販売管理ソフトの取り扱い

税込1 万円未満の振込⼿数料の値引きは 「適格返還請求書(返還インボイス)」の発⾏が免除されたとしても、販売管理ソフトを使用している企業の実務では値引き伝票(いわゆる赤伝票)をシステム上発行する必要があります。
その結果、販売管理ソフトで下記の計算式が成り立ちます。

前月繰越売掛金+当月発生売上額-当月回収売掛金―当月値引き額=当月売掛金残高

つまり、実務上は今までと同様に、売上請求先に対する振込手数料相当額の値引き処理が必要であるが、「適格返還請求書(返還インボイス)」の発⾏が消費税法上は免除されることになります。

2. 領収証発行の取り扱い

国税局に確認したところ、適格請求書にインボイス登録番号、税抜金額、消費税率、消費税額(以下、登録番号等という)が記載されていれば登録番号等の記載がない領収証の発行が認められます。
ただし適格請求書を発行していない売上先に領収証を発行する場合(例えば現金売上等)もあり得るので領収証にも登録番号等を記載することをお勧めします。

また、売上先に発行する領収証の金額は「実際に受取った金額」です。したがって売上値引きがあった場合は請求額と領収額は一致しません。

これを振込手数料相当額の値引きに当てはめると、売上請求額-振込手数料相当額の値引き額=領収金額となります。
同じく消費税に関しても請求額に対する消費税額-振込手数料に対する消費税額=領収した消費税額となります。

混乱を避けるためには、領収証の「ただし書」で値引き額と値引き額に対する消費税額及び消費税率を記載するといいでしょう。

(完)