大槻雅章税理士事務所

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№138 居住者と非居住者の所得税課税について

2020-08-01 | ブログ
2020.08.01

日本国籍を有する個人、または外国籍の個人が日本国内において所得が生じた場合には、その個人が「居住者」か「非居住者」かによって、所得税の課税方法が変わってきます。以下に解説していきます。

(1)居住者とは?

①「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいいます(所法2①)。
②「住所」とは、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実」で判定されます(所基通2-1)。
③「居所」とは、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」をいいます。

※日本国外に居住することとなった個人が、次のいずれかに該当する場合には、日本国内に「住所」を有しない者と推定されます。
1.国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
2.外国籍を有し、または外国の法令により外国に永住する許可を受けており、かつ、日本国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないこと、その他日本国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らして、再び日本国内に帰り、主として日本国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと。

※租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を防止するため、個人がいずれの国の居住者になるかの判定方法を定めています。
個人の①恒久的住居の場所、②利害関係の中心がある場所、③常用の住居の場所、④国籍の順で判定し、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。

(2)永住者と非永住者の区分

「居住者」は、「永住者」と「非永住者」に区分されます。
① 次のいずれかに該当する者は「永住者」となります。
永住の意思に関係なく、国内に住所または居所を有する期間が、現在まで引き続いて5年を越える者
永住の意思があり、かつ、国内に住所を有する期間が、現在まで引き続いて5年以下である者
永住の意思があり、かつ、国内に居所を有する期間が、現在まで引き続いて1年以上5年以下である者
② 「非永住者」とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が、5年以下である個人をいいます。

(3)居住者(永住者・非永住者)と非居住者の所得税課税

1.「居住者のうち永住者」は、所得が生じた場所が日本の内外にかかわらず、すべての所得に対して日本において所得税を納める義務があります(いわゆる全世界所得課税)。
2.「居住者のうち非永住者」は、国内の所得(国内源泉所得)の全てと国外の所得(国外源泉所得)のうち国内で支払われたもの及び国内に送金されたものに課税されます。
3.「非居住者」は、国内源泉所得のみが課税対象とされます。

※非居住者とは、居住者以外の個人で、次のいずれかに該当する者をいいます。
①国内に住所及び居所を有しない者
②国内に住所を有せず、かつ、居所を有する期間が、現在まで引き続いて1年末満である者

(完)