大槻雅章税理士事務所

http://otsuki-zeirishi.server-shared.com/

№29 株式等に係る譲渡損失の確定申告

2011-04-27 | ブログ

2011.03.10 所得税/株式等に係る譲渡損失の確定申告

株式等(株式、新株予約権付社債、公社債投資信託以外の証券投資信託等)を譲渡した場合は、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税」となります。
したがって、株式等を譲渡した場合に生じる赤字の金額は、他の株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない赤字の金額は、他の各種所得の金額から差し引くことはできません(措法37の10)。

また、金融商品取引業者等が年間の譲渡損益を計算する特定口座制度が設けられており、源泉徴収口座を選択した場合にはその口座内における年間取引の譲渡損益及び配当等については、原則として、確定申告をする必要はありません(措法37の11の4~37の11の6)。

ただし、上場株式等に係る譲渡損失の金額は、平成21年分以降、確定申告により、その年分の上場株式等に係る配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限ります。)と損益通算ができ、また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以降3年間にわたり繰越控除することができます(措法37の12の2)。
繰越控除は、まず株式等に係る譲渡所得等の金額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときは、上場株式等に係る配当所得の金額から控除します(措令25の11の2⑧)。

例えば、A、B、C、Dの各証券会社から上場株式等の「特定口座年間取引報告書」が送付されてきた年分に、Eのような非公開株式の譲渡があった場合の確定申告を考えてみましょう。

・A証券会社・・・上場株式の譲渡対価2,000万円、取得費等1,000万円、源泉所得税7万円
・B証券会社・・・上場株式の譲渡対価500万円、取得費等2,000万円、源泉所得税0円
・C証券会社・・・証券投資信託の譲渡対価100万円、取得費等500万円、配当所得10万円、配当所得に係る源泉所得税の還付税額7千円
・D証券会社・・・・証券投資信託の譲渡対価1,000万円、取得価額500万円、配当所得100万円、源泉所得税10.5万円
・E非上場会社の株式譲渡・・・譲渡価額200万円、取得価額300万円、配当所得2万円その源泉所得税4千円

この場合は、まず3つのグループに分けて所得の金額を計算します。
①上場株式等の譲渡損益  (2,000+500+100+1,000)-(1,000+2,000+500+500)=△400万円
②上場株式等に係る配当所得 10+100=110万円
③未公開株式の譲渡損益 200-300=△100万円

次に、上場株式等に係る譲渡損失の金額400万円と上場株式等に係る配当所得の金額110万円を損益通算します。そして控除しきれなかった上場株式等に係る損失の金額290万円は、翌年以降3年間繰り越されます。

また、未公開株式の譲渡損失の金額100万円は切り捨てられます(上場株式等に係る譲渡益が残る場合には控除できます)。未公開株式の配当所得は総合課税するか、または申告不要(年10万円以下の場合)とするか、有利な方法を選択できます。

以上の結果、上場株式等の譲渡益および配当金に係る源泉所得税(7+10.5-0.7)=16.8万円が還付されます。

※住民税も所得税と同じ方法で計算します。

(完)
.