大槻雅章税理士事務所

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№104 報酬料金等の請求書に含まれる取材費、旅費、宿泊費の源泉徴収について

2017-08-16 | ブログ
2017.08.10 報酬料金等の請求書に含まれる取材費、旅費、宿泊費の源泉徴収について

今回は、デザイナーから受け取った請求書に「報酬以外の取材費、旅費、宿泊費の明細」が含まれている場合の源泉徴収義務について質問がありましたので解説いたします。

個人事業者であるデザイナー等に報酬等の支払いをする者は、その報酬等を支払う際に所得税および復興特別所得税を源泉徴収する必要があります(所法第204条①、復興財確法第28条①)。

この場合、デザイナー等が請求する取材費・旅費・宿泊費の金額が源泉徴収の対象になるか否かについては次のような規定があります。

(所得税法に定める源泉徴収義務)
第204条  居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一  原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金


(所得税法基本通達、報酬・料金等の性質を有するもの)
204-2 法第204条第1項第1号、第2号及び第4号から第7号までに掲げる報酬、料金又は契約金の性質を有するものについては、たとえ謝礼、賞金、研究費、取材費、材料費、車賃、記念品代、酒こう料等の名義で支払うものであっても、同項の規定が適用されることに留意する。


(所得税法基本通達、報酬又は料金の支払者が負担する旅費)
204-4 法第204条第1項第1号(中略)に掲げる報酬又は料金の支払をする者が、これらの号に掲げる報酬又は料金の支払の基因となる役務を提供する者の当該役務を提供するために行う旅行、宿泊等の費用も負担する場合において、その費用として支出する金銭等が、当該役務を提供する者(中略)対して交付されるものでなく、当該報酬又は料金の支払をする者から交通機関、ホテル、旅館等に直接支払われ、かつ、その金額がその費用として通常必要であると認められる範囲内のものであるときは、当該金銭等については、204-2にかかわらず、源泉徴収をしなくて差し支えない。


※以上の源泉徴収の諸規定をまとめますと、

①デザインの報酬は、所得税法204条の規定により源泉徴収の対象となります。

②デザイン報酬の支払いを受けるデザイナー等が請求する取材費・材料費・旅費・宿泊費等は、所得税法基本通達204-2により源泉徴収の対象となります。

③ただし、基本通達204-4により通常必要な範囲の金額で、報酬・料金等の支払者が直接交通機関やホテル等に支払った場合は、源泉徴収の対象外になっています。

基本通達204-4でいうところの「報酬又は料金の支払をする者が、通常必要であると認められる範囲の旅費や宿泊費などを支払った場合は、源泉徴収をしなくて差し支えない。」という定めを逆に読むと、報酬・料金等の支払者が直接支払っていない旅費や宿泊費等は源泉徴収の対象となるということです。


(完)