大槻雅章税理士事務所

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№78 所得税・法人税:確定拠出年金の優遇税制

2015-06-05 | ブログ
2015.05.06 確定拠出年金の優遇税制

2015年5月6日付け日経新聞一面の記事によれば、運用成績で年金額が変わる確定拠出年金を導入する企業が増えてきています。厚生労働省の調べでは2015年3月末時点で19,832社が導入し、2020年までに2万社とした政府の目標を近く達成する見込みとのことです。

導入が増えた背景としては、①他の企業年金と比べ企業の財政負担が軽いこと、②政府が優遇税制の拡充をしていること、③日経平均株価や投資信託運用益が上昇し運用環境が好転していることなどがあげられています。

確定拠出年金は加入者個人が運用方法を決めることができるので、選択した運用が好調であれば受け取る年金額が増えるというメリットがあります。また課税上の優遇もメリットといえます。反面、確定拠出年金は投資リスクを各加入者が負うことになるので、運用が不調の場合は受け取る年金額が減るというリスクが生じます。また原則60歳まで掛金の途中引き出しができません。

そこで今回は、確定拠出年金の優遇税制について解説したいと思います。なお、確定拠出年金の仕組みについては下記の厚生労働省のホームページをご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/


(1)掛金支払時の優遇税制

①個人型の場合

その年に支払った確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除できます(所法75条②二)。その結果、所得税、住民税が軽減されます。

毎年10月頃に、その年に支払った(または支払い予定の)掛金について連合会が「掛金払込証明書」を送付しますので、確定申告や年末調整で所得控除を受けるときに添付します。(初回掛金の納付が10月以降の場合、翌年の1月に送付されます。)

②企業型の場合

掛金は全額損金算入となり、かつ、その額は給与所得として従業員に課税されることもありません。ただし、運用益には特別法人税が課税されますが、平成28年度まで課税凍結(非課税)となっています。


(2)受取時の優遇税制

①老齢給付金として受け取る場合
雑所得となり、公的年金等控除の対象となります。その結果、所得税、住民税が軽減されます。

②一時金として受け取る場合
退職所得となり、掛金拠出期間を勤続年数と見なして退職所得控除の対象となります。その結果、所得税、住民税が軽減されます。

③障害給付金として受け取る場合
所得税、住民税ともに非課税です。

④死亡一時金として受け取る場合
みなし相続財産として相続税の課税対象となります。保険金の非課税限度額として500万円×法定相続人の数により計算した金額が非課税となり、相続税が軽減されます。

⑤脱退一時金として受け取る場合
一時所得として課税されるので、(脱退一時金の額-50万円)×1/2が課税対象となります。その結果、所得税、住民税が軽減されます。

(完)