大槻雅章税理士事務所

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№122 非上場株式を低額譲渡した場合の課税関係

2019-05-01 | ブログ
2019.05.01

前回は取引相場のない株式(非上場株式)の評価方法を解説しましたが、今回は非上場株式を低額譲渡(適正時価>譲渡価額)した場合の課税関係をまとめました。
高額譲渡(適正時価<譲渡価額)の場合は次回に解説します。

以下(1)から(4)の設例では、非上場株式の取得価額100、適正時価(№121で解説した財産評価基本通達による評価額)500、譲渡価額200とします。

(1)個人から個人への低額譲渡

■個人が個人に譲渡価額200(適正時価より安い価額)で低額譲渡した場合

①個人売主の「譲渡所得」課税
(譲渡価額200-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)

②個人買主の「みなし贈与」課税
(適正時価500-譲渡価額200)×贈与税率

※個人売主は低額譲渡しても適正時価で課税されることはない。
※個人買主は適正時価と譲渡価額の差額(みなし贈与)に対して贈与税が課税される。
暦年課税の贈与税は年間110万円の基礎控除があるので、110万円を超える部分に課税される。なお、税率は10%から50%の累進税率。

(2)個人から法人への低額譲渡

■個人が法人に譲渡価額200(適正時価の2分の1未満の価額)で低額譲渡した場合

①個人売主の「みなし譲渡所得」課税
(適正時価500-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)

②法人買主の「受増益」課税
(適正時価500-譲渡価額200)×法人税率

※個人売主は、適正時価と取得価額の差額に対して「みなし譲渡所得」課税される。
※法人買主は、適正時価と譲渡価額の差額(受増益)に対して法人税が課税される。

(3)法人から個人への低額譲渡

■法人が個人に譲渡価額200(適正時価より安い価額)で低額譲渡した場合

①法人売主の課税
A.「譲渡益」課税
(適正時価500-取得価額100)×法人税率が「譲渡益」課税されます。

B.法人と個人間に雇用関係等があるとき
適正時価500-譲渡価額200=300が「賞与」となります。
従業員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税されます。
役員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税され、同時に法人に対しては「役員賞与300」×法人税率が課税されます。

C.法人と個人間に雇用関係がないとき
適正時価500-譲渡価額200=300が法人売主に「寄付金」として課税されます。

②個人買主の課税
適正時価500-譲渡価額200=300が一時所得として総合課税されます。
一時所得の金額は「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)」で計算します。その所得金額の1/2に相当する金額が総合課税されます。

※法人売主は「譲渡益」「役員賞与」「寄附金」課税され、法人の従業員は「給与所得」課税される。
※個人買主は「一時所得」として所得税が総合課税される。

(4)法人から法人への低額譲渡

■法人が法人に譲渡価額200(適正時価より安い価額)で低額譲渡した場合

①法人売主の課税
(適正時価500-取得価額100)×法人税率が「譲渡益」課税され、適正時価500-譲渡価額200=300が「寄附金」課税されます。

②法人買主の「受増益」課税
(適正時価500-譲渡価額200)×法人税率が「受増益」課税されます。

※法人売主は、適正時価と取得価額の差額に対して「譲渡益」課税され、同時に「寄附金の損金不算入限度額を超える金額」は損金に算入されない。
※法人買主は、適正時価と譲渡価額の差額(受増益)に対して法人税が課税される。


(完)