2011.05.05 決算賞与の支給額の通知
法人が使用人に対して決算賞与を支給する場合があります。使用人に支給する賞与の額は、原則として支給日の属する事業年度に損金算入されますが、次の(1)~(3)のすべての要件を満たせば、使用人にその支給額を通知した日の属する事業年度の損金の額に算入することができます(法令72の3)。この場合、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額も含まれます。 (完)
(1)その支給額を、各人別に、かつ、支給を受けるすべての使用人に対して通知していること。
※法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合には通知に該当しません(法基通9-2-43)。
※法人が、パートタイマー又は臨時雇いの者と、その他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに通知を行ったかどうかを判定できます(法基通9-2-44)。
(2)上記(1)の通知をした金額を、通知したすべての使用人に対しその通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
(3)その支給額につき通知をした日の属する事業年度に損金経理をしていること。
以上のように、この規定では、通知が重要なポイントになっており、税務調査において通知したかどうか問題になることがあります。では、どのような方法で通知する必要があるのでしょうか?書面ではなく口頭の通知は認められるのでしょうか?
“通知”とは、民法上の概念を借用すれば、「意思又はある事実を他人に知らせること」で、その具体的効果は“意思表示”及び“行為能力”に関する規定がどこまで適用されるかが問題とされます。ところが、法人税法には“通知”の具体的な方法を示す政令、規則、通達などの定めがありません。
一方、民法上の“意思表示”は口頭でも効力が生じ、“行為能力”は法人に支払い可能な財産があれば有効とされます。
したがって、法人が各人別に、かつすべての使用人に支給額を口頭で伝えている場合には、法人に支払い可能な資金がある限り“通知”に該当すると思われます。
しかし、口頭による意思表示の不了知・誤解のリスクを避け、法人が使用人に通知をした根拠を残すためにも、法人は期末までに各人別の支給明細書を作成し、使用人に渡しておく方がベターでしょう。支給額を書いた通知書を作成して使用人のサインを受領する方法でも良いでしょう。
また、税法に“通知”に関する規定がないことが問題であり、税務行政側は明文規定や通達で“通知”の具体的な方法を例示する必要があると考えます。