大槻雅章税理士事務所

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№120 所得税:上場株式等の配当控除

2019-03-21 | ブログ
2019.03.21

上場株式等の配当は、支払時に所得税15.315%(復興特別所得税含む)、住民税5%の税率で源泉徴収されるので確定申告を要しませんが、確定申告をすることもできます。

確定申告をするときには、課税方法として総合課税か申告分離課税かを選択することができます。自分にとって有利な方法を選択すれば良いわけです。

ただし、その確定申告する上場株式等の配当の全額について、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択しなければなりません。また、確定申告において上記のいずれかを選択した場合は、その後、修正申告や更正の請求において、その選択を変更することはできません。

(1)総合課税を選択した場合=配当控除の適用あり

総合課税とは、各種所得の金額を合計して所得税額を計算する課税方法で、総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができます。

(注1) 配当所得の金額
収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)-株式などを取得するための借入金の利子

(注2) 配当控除の額
①その年分の課税総所得金額等が1千万円以下の場合は、
次のイ+ロ
イ.剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10%
ロ.証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×5%(外貨建は2.5%)

②その年分の課税総所得金額等が1千万円を超え、かつ、課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1千万円以下の場合は、
次のイ+ロ+ハ
イ.剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10%
ロ.(証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1千万円を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額)×2.5%(外貨建は1.25%)
ハ.証券投資信託の収益の分配に係る剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち(A)を超える部分の金額×5%(外貨建は2.5%)

③課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1千万円を超える場合(次の④を除く)は、
次のイ+ロ+ハ
イ.(剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1千万円と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額)×5%
ロ.剰余金の配当等に係る配当所得のうち、(A)を超える部分の金額×10%
ハ.証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額×2.5%(外貨建は1.25%)

④課税総所得金額等から剰余金の配当等に係る配当所得の金額と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額が1千万円を超える場合は、
次のイ+ロ
イ.剰余金の配当等に係る配当所得の金額×5%
ロ.証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×2.5%(外貨建は1.25%)

(2)申告分離課税を選択した場合=配当控除の適用なし

申告分離課税とは、他の所得金額と合計して総合課税せず、分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納める制度です。
平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得(平成28年1月1日以後は特定上場株式等の配当等に係る配当所得)については、申告分離課税を選択することができます。

申告分離課税を選択した場合の税率は、平成26年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率が適用されます。

(3)特定口座で源泉分離課税された上場株式の配当を確定申告で総合課税する場合=配当控除の適用あり

特定口座とは、申告分離課税が適用になる上場株式等の譲渡益課税について、証券会社が損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」を交付する制度です。この場合、特定口座内に受け入れた上場株式等の配当は、その特定口座内の上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算できます。

特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択した場合には、その特定口座における上場株式等の譲渡による所得は原則として、確定申告は不要です。
ただし、他の証券会社の特定口座の譲渡損益と相殺する場合や上場株式等に係る譲渡損失を3年間繰越控除する特例の適用を受けたいときは、確定申告をする必要があります。

特定口座で源泉分離課税された上場株式等の配当(大口株主を除く)を確定申告で総合課税することを選択した場合は、配当控除の適用があります。

以上を総じて、特定口座内の上場株式等に譲渡損失がある納税者および総合課税の税率が源泉分離課税の20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)を超える納税者は確定申告しない方が有利になります。

一方、所得税の税率が15.315%に満たない納税者は、確定申告で総合課税を選択して配当控除および源泉徴収税額の控除を受けることにより所得税の還付を受けることが可能です。

ただし、総合課税の住民税率は10%ですから、源泉徴収された住民税5%との差額5%分、確定申告により住民税額は増加します。

(完)