大槻雅章税理士事務所

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№153 電子帳簿保存法の保存要件

2021-11-08 | ブログ
2021.11.8

まず、前回の№152で解説した概要をおさらいします。

令和3年度に改正された電子帳簿保存法の適用届出書を提出した企業は、自らが作成した総勘定元帳等の帳簿、請求書、納品書の控えが電子保存できます。
また、紙の媒体で受領した請求書、領収書等はスキャナで電子化して保存することもできます。ここでいうスキャナ保存には、スマホやデジカメで撮影した写真の電子化も含まれます。
これらの電子保存は、所轄税務署長に承認申請して承認を受けることが必要でしたが(令和3年度改正前)、改正後は適用届出書の提出で済みます。
ただし、電子取引の取引情報の保存(データの保存+システムの保存)が義務となります。また、国税関係帳簿書類を従来通り書面で保存することも可能で、電子保存と書面保存の選択は企業の任意です。

今回は、令和3年改正の電子保存要件を解説したいと思います。

電子帳簿保存法第4条第1項によれば、保存義務者は、
①「国税関係帳簿の全部又は一部について」
②「自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合」
③「財務省令で定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存をもって」
当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
と規定しています。

①「国税関係帳簿の全部又は一部について」
全部又は一部ということは、あらゆる帳簿を一律に電子保存の対象としなくてもよいということです(通達4-1、4-2)。
保存対象となる国税関係帳簿を列挙すれば、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売上帳、仕入帳、手形帳等がありますが、現金出納帳は書面保存し、その他は電子保存することが可能です。
また、本店は電子保存し、事業所は書面保存を選択することが可能です。

②「自己が最初の記録段階から一貫して」
自己とは保存義務者本人はもちろん、委託先(会計事務所や代行業者)も含まれます。ただし、保存義務者は委託先からいつでも保存場所に備え付けているディスプレイの画面及び書面に出力することができるようにしておかなければなりません。
最初の記録段階から一貫してとは、帳簿を備え付けて記録を蓄積していく段階の始めから終わりまで電子計算機の使用を貫いて作成する場合をいいます(通達4-4)。
例えば、企業内の決済、整理などの手作業の資料作成をしているシステムの場合は、内部統制を目的とした帳簿の利用であり帳簿の作成プロセスではないので、帳簿自体の作成においてシステムが一貫していると解釈されます。

③「電磁的記録の備付け及び保存をもって」
通常の書面の帳簿と同様に本店所在地もしくは経理部門など税務調査で調査官が確認できる場所に備え付け及び保存することをいいます。
納税地の所在地以外にサーバ等がある場合は、納税地にある電子計算機のディスプレイの画面及び書面に出力できる状態にあれば、納税地に保存等がされているとものとして取り扱われます(一問一答帳簿-問13)。

(完)