大槻雅章税理士事務所

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№79 法人税:事業税の税効果と実効税率

2015-07-18 | ブログ
2015.06.05 法人税:事業税の税効果と実効税率

法人税等の実際税率と実効税率に関する質問がありましたので解説いたします。

普通法人の法人税の税率が、平成27年4月1日以後開始する事業年度から23.9%(改正前は 25.5%)に引き下げられました。ただし、中小企業者等においては年800万円以下の課税所得の税率は平成 29 年3月 31 日まで15%となっています(適用期限が2年延長)。

住民税の法人税割は法人税額が課税標準となるので、法人税率の引き下げに伴い住民税の税率も実質的に引き下げられることになります。

また、事業税は法人税の課税所得の計算上損金算入されます。したがって、その影響は法人税の軽減だけでなく、住民税および事業税に及ぶことになります。

次に、確定申告書に記載された事業税の額は、その申告書が提出された日の属する事業年度(つまり翌期)に損金算入されます。

よって、実際税率で計算した損益計算書の法人税住民税事業税額は、事業税の翌期での損金算入効果を前取りしています。

したがって、実際税率で計算した法人住民税事業税額と、事業税の損金算入効果を考慮した実効税率で計算した法人住民税事業税額の差額(法人税等調整額)は、貸借対照表に「繰延税金資産」として資産計上し、損益計算書の法人税住民税事業税額から控除して調整します。

仕訳で示すと、(借方)繰延税金資産×××/(貸方)法人税等調整額××× となります。

×××の金額は以下の計算式で算出します。

法人税等調整額=(損金に算入されない事業税額)×(実効税率)

具体的に、大阪市の住民税、事業税の税率を適用した実際税率と事業税損金算入の税効果を考慮した後の実効税率を計算します。結果は、下記(1)のように実際税率が38.87%、(4)のように実効税率は35.31%となります。

また、(損金に算入されない事業税額)×(実効税率)で算出した(5)①の法人税等調整額3.56円は、実際税率で計算した法人税住民税事業税額と実効税率で計算した法人税住民税事業税額との差額である(5)②3.56円と合致することがお分かり頂けると思います。

(1) 実際税率

法人税 24.95%  23.90%+23.90%×地方法人税4.4%(№69参照)
住民税 3.85%  23.90%×(大阪府4.2%+大阪市11.9%=16.1%)
事業税 10.07%  所得割7.18%+地方法人特別税(6.7%×43.2%)
(合計) 38.87%

(2) 税効果を考慮した事業税の計算

事業税額を損金算入する前の法人税の課税所得を100円、

事業税の損金算入効果を考慮した事業税額をX円とすると

(100円-X円)×事業税実際税率10.07%=X円

∴ X=9.148円

(3) 税効果を考慮した法人税および住民税

法人税 (課税所得100円-9.148円)×実際税率24.95%=22.668円

住民税 (課税所得100円-9.148円)×実際税率3.85%=3.497円


(4) 実効税率 ・・・ 上記(2),(3)より

法人税 22.668%
住民税 3.497%
事業税 9.148%
(合計) 35.31%


(5) 法人税等調整額

①(100円×事業税実際税率10.07%)×実効税率35.31%=3.56円

②課税所得100円×(実際税率38.87%-実効税率35.31%)=3.56円


(完)