2023.04.26
免税事業者が課税事業者となる場合、または課税事業者が免税事業者となる場合には、棚卸資産に係る課税仕入れ等の税額について消費税額の調整が必要になります。
今回は、この調整について簡易課税を選択している事業者の計算はどうなるか質問があったので解説したいと思います。
1.免税事業者が課税事業者となる場合
免税事業者が課税事業者となる場合、免税事業者の期間中に仕入れた棚卸資産(=期首棚卸資産)を有しているときは、その期首棚卸資産に係る消費税額は課税事業者となる課税期間の課税仕入れとみなして仕入税額控除ができます。
これは消費税法36条1項の「みなし規定」で定められています。
免税期間中の「当該課税仕入れに係る棚卸資産又は当該課税貨物に係る消費税額」を、課税事業者となった課税期間の「仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなす」というものです。
実務では、消費税申告書の付表で調整します。
2.課税事業者が免税事業者となる場合
課税事業者が免税事業者となる場合、免税事業者となる課税期間の直前の課税期間中に仕入れた棚卸資産(=期末棚卸資産)を有しているときは、その期末棚卸資産に係る消費税額は免税事業者となる課税期間の直前の課税期間で仕入税額控除をします。
これは同36条5項に以下のように規定されています。
「事業者が、消費税を納める義務が免除されることとなった場合(同9条1項)、同項の規定の適用を受けることとなった課税期間の初日の前日において当該前日の属する課税期間中に国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産を有しているときは、当該課税仕入れに係る棚卸資産に係る仕入税額控除の調整(同30条1項、2項)については、当該課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額に含まれないものとする。
※消30条1項「課税仕入れ等の税額」
① 当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額
② 当該課税期間中に国内において行った特定課税仕入れに係る消費税額
③ 当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額
3.簡易課税の場合
では簡易課税制度を選択している事業者の場合はどうなるのでしょうか?
結論は、簡易課税制度を選択している事業者は棚卸資産に係る仕入税額控除の調整は行いません。
その根拠は簡易課税制度を規定している第37条に示されています。第37条は、基準期間における課税売上高が5千万円以下で課税期間開始の日の前日までに届出書を提出している課税期間については以下のように計算すると規定しています。
「第30条から前条(=第36条)までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定(=第30条~第36条)にかかわらず、次に掲げる金額の合計額(=みなし仕入れ率を掛けた金額)とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。」
4.まとめ
これまで説明したとおり、簡易課税制度を選択している事業者の「仕入税額控除の計算」は、第30条~第36条までの規定を適用せずに、第37条の規定のとおり行います。
したがって、簡易課税制度を選択している事業者は、棚卸資産に係る仕入税額控除の調整(=第36条)の計算は行わないことになります。
(完)
免税事業者が課税事業者となる場合、または課税事業者が免税事業者となる場合には、棚卸資産に係る課税仕入れ等の税額について消費税額の調整が必要になります。
今回は、この調整について簡易課税を選択している事業者の計算はどうなるか質問があったので解説したいと思います。
1.免税事業者が課税事業者となる場合
免税事業者が課税事業者となる場合、免税事業者の期間中に仕入れた棚卸資産(=期首棚卸資産)を有しているときは、その期首棚卸資産に係る消費税額は課税事業者となる課税期間の課税仕入れとみなして仕入税額控除ができます。
これは消費税法36条1項の「みなし規定」で定められています。
免税期間中の「当該課税仕入れに係る棚卸資産又は当該課税貨物に係る消費税額」を、課税事業者となった課税期間の「仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなす」というものです。
実務では、消費税申告書の付表で調整します。
2.課税事業者が免税事業者となる場合
課税事業者が免税事業者となる場合、免税事業者となる課税期間の直前の課税期間中に仕入れた棚卸資産(=期末棚卸資産)を有しているときは、その期末棚卸資産に係る消費税額は免税事業者となる課税期間の直前の課税期間で仕入税額控除をします。
これは同36条5項に以下のように規定されています。
「事業者が、消費税を納める義務が免除されることとなった場合(同9条1項)、同項の規定の適用を受けることとなった課税期間の初日の前日において当該前日の属する課税期間中に国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産を有しているときは、当該課税仕入れに係る棚卸資産に係る仕入税額控除の調整(同30条1項、2項)については、当該課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額に含まれないものとする。
※消30条1項「課税仕入れ等の税額」
① 当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額
② 当該課税期間中に国内において行った特定課税仕入れに係る消費税額
③ 当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額
3.簡易課税の場合
では簡易課税制度を選択している事業者の場合はどうなるのでしょうか?
結論は、簡易課税制度を選択している事業者は棚卸資産に係る仕入税額控除の調整は行いません。
その根拠は簡易課税制度を規定している第37条に示されています。第37条は、基準期間における課税売上高が5千万円以下で課税期間開始の日の前日までに届出書を提出している課税期間については以下のように計算すると規定しています。
「第30条から前条(=第36条)までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定(=第30条~第36条)にかかわらず、次に掲げる金額の合計額(=みなし仕入れ率を掛けた金額)とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。」
4.まとめ
これまで説明したとおり、簡易課税制度を選択している事業者の「仕入税額控除の計算」は、第30条~第36条までの規定を適用せずに、第37条の規定のとおり行います。
したがって、簡易課税制度を選択している事業者は、棚卸資産に係る仕入税額控除の調整(=第36条)の計算は行わないことになります。
(完)