大槻雅章税理士事務所

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№139 住所の定義と認定 

2020-09-22 | ブログ
2020.09.22

今回は、住所についての根拠法である住民基本台帳法において、住所をどのように定義し、認定しているか解説したいと思います。

1.住所の定義

民法第22条は「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と定め、住民基本台帳法第4条は「住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法第10条第1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない」と規定しています。

ここで地方自治法第10 条第1項を確認すると「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」とされているので、住民とは、その市町村の区域内に住所を有する者になります。

以上を総じて、住民基本台帳法上の住民の住所とは、地方自治法第10条第1項でいう住所と同一で一人について1つしか存在せず、民法第22条の規定と同じく、その市町村の区域内における各人の「生活の本拠」をいうことになります。

住所は1つという解釈をしているのは、住民が行政から国民健康保険や介護保険等のサービスを受ける場合、どの地方公共団体からサービスの提供を受けるか明確にする必要があるからです。

2.住所の認定

次に、居所が複数あり、どこが「生活の本拠」となるか判断が難しい場合があります。居所とは、引き続いて居住する場所ですが、住所とは、生活の本拠であり、私的生活の中心であると解されているので、現在居住しているというだけでは、その居所が私的生活の中心とは言えないからです。
最高裁の判決では、「住所とは、生活の本拠、すなわち、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきである。」と判示しており(昭和29年オ)第412号)、この考え方が住所認定の考え方の基準となっています。

(居住期間で住所を認定するケース)
児童福祉施設、老人福祉施設、精神薄弱者援護施設、身体障碍者更生援護施設、婦人保護施設等の施設に入所する場合、1年以上にわたって居住することが予想される者の住所は、施設の所在にある(昭和46年3月31 日自治振第128号問8)。

(私的生活における家族との関わりで住所を認定するケース)
船員については、航海と航海の中間期間、休暇等に際して家族と生活を共にする関係を失わず、かつ、家族の居住地以外に居を構えてそこを生活の本拠としているような状況がない限りその者の住所は、家族の居住地にある(昭和46年3月31日自治振第128号問7)。

3.「居住期間」と「私的生活における家族との関わり」の優先順位

次に、「居住期間」と「私的生活における家族との関わり」の双方が住所の認定理由となる場合、どちらの認定理由が優先されるでしょうか。

(具定例1)
病院、療養所等に入院、入所している者の住所は、医師の診断により1年以上の長期、かつ、継続的な入院治療を要すると認められる場合を除き、原則として家族の居住地にある(昭和46年3月31 日自治振第128号問3)。

(具体例2)
勤務の関係上家族と離れて居住している会社員等の住所は、本人の日常生活関係、家族との連絡状況等の実情を調査確認して認定するものであるが、確定困難な者で、毎週土曜日、日曜日のごとく勤務日以外には家族のもとにおいて生活を共にする者については、家族の居住地にあるものとする(昭和46 年3月31日自治振第128 号通知問4)。

上記の事例に共通していることは、家族と共に居住していた者が、現在家族と離れて居住している場合において、家族と共に居住していたときと、現在を比較し、私的生活における家族との関わりが変わらない場合は、家族の居住地が住所と認定されるということです。

つまり、「居住期間」よりも「私的生活における家族との関わり」が優先されることが分かります。

(完)