2020.03.01
長男が借金をし、その借金を長男の代わりに父が返済した場合、その返済額に贈与税が課税されるかどうかの質問がありました。
そこで、今回は債務免除等を受けた場合の贈与税の課税関係を解説したいと思います。
相続税法では、対価を支払わないで債務免除等を受けた場合には、その債務に相当する金額の贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課税されます(相法8条前段)。したがって、長男の借金を父が返済すれば、その返済額に対し、長男には贈与税が課税されます。
ただし、長男が債務超過に陥っているため、第三者に対する債務の弁済が困難な場合に(相基通7-4)、長男の代わりに父等の扶養義務者(相基通1の2-1)が債務の金額(相基通7-5)を弁済しても、長男に贈与税が課税されることはありません(相法8条ただし書)。
根拠条文と通達は以下のとおりです。
1.相続税法第八条(債務免除を受けても贈与税の課税対象から除かれる場合)
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
一 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
二 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。
2.「扶養義務者」の意義(相基通1の2-1)
「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法第877条(扶養義務者)の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)
3.「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」の意義(相基通7-4)
「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」とは、その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいうものとする。(昭57直資2-177、平18課資2-2改正)
4.「弁済することが困難である部分の金額」の取扱い(相基通7-5)
「債務を弁済することが困難である部分の金額」は、債務超過の部分の金額から、債務者の信用による債務の借換え、労務の提供等の手段により近い将来において当該債務の弁済に充てることができる金額を控除した金額をいうものとするのであるが、特に支障がないと認められる場合においては、債務超過の部分の金額を「債務を弁済することが困難である部分の金額」として取り扱っても妨げないものとする。(昭57直資2-177改正)
(完)
長男が借金をし、その借金を長男の代わりに父が返済した場合、その返済額に贈与税が課税されるかどうかの質問がありました。
そこで、今回は債務免除等を受けた場合の贈与税の課税関係を解説したいと思います。
相続税法では、対価を支払わないで債務免除等を受けた場合には、その債務に相当する金額の贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課税されます(相法8条前段)。したがって、長男の借金を父が返済すれば、その返済額に対し、長男には贈与税が課税されます。
ただし、長男が債務超過に陥っているため、第三者に対する債務の弁済が困難な場合に(相基通7-4)、長男の代わりに父等の扶養義務者(相基通1の2-1)が債務の金額(相基通7-5)を弁済しても、長男に贈与税が課税されることはありません(相法8条ただし書)。
根拠条文と通達は以下のとおりです。
1.相続税法第八条(債務免除を受けても贈与税の課税対象から除かれる場合)
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
一 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
二 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。
2.「扶養義務者」の意義(相基通1の2-1)
「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法第877条(扶養義務者)の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)
3.「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」の意義(相基通7-4)
「資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合」とは、その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいうものとする。(昭57直資2-177、平18課資2-2改正)
4.「弁済することが困難である部分の金額」の取扱い(相基通7-5)
「債務を弁済することが困難である部分の金額」は、債務超過の部分の金額から、債務者の信用による債務の借換え、労務の提供等の手段により近い将来において当該債務の弁済に充てることができる金額を控除した金額をいうものとするのであるが、特に支障がないと認められる場合においては、債務超過の部分の金額を「債務を弁済することが困難である部分の金額」として取り扱っても妨げないものとする。(昭57直資2-177改正)
(完)