2011.1.30 相続税/代償分割
相続人が、被相続人の遺産を分割協議する場合、財産の種類によっては複数の相続人に現物を割り当てるのが困難なケースがあります。これに対処するために、代償分割という遺産分割の方法があります。
代償分割というのは、特定の相続人が、ある相続財産を現物で取得したとき、他の相続人にはその代償として金銭を支払うという遺産分割の手法です。
金銭で支払うのではなく、相続人固有の不動産を充てた場合は代物分割といいます。この場合には、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となりますので、その履行した人については、その履行の時における時価によりその資産を譲渡したことになり、所得税が課税されます。一方、代償財産として不動産を取得した人については、その履行があった時の時価により、その資産を取得したことになります。
代償分割は、事業用の不動産や同族会社の株式を事業を承継する人が相続した場合や、土地を相続人が共有することで発生するトラブルを未然に防ぐ場合等に利用されます。
代償分割は遺産分割の1つの手法ですから、遺産分割協議書を作成するときには、代償分割によって遺産分割を行ったことを次のように記載します。
(1)被相続人の遺産は全て長男が相続する。
(2)長男は、その取得した相続財産の代償として、次男に対して現金○○万円を本協議書の調印と同時に支払うものとする。
代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算は、次のとおりです。
①代償財産を交付した人の課税価格=(相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額)-(交付した代償財産の価額)
②代償財産の交付を受けた人の課税価格=(相続または遺贈により取得した現物の財産価額)+(交付を受けた代償財産の価額)
代償財産の価額は、原則的には実際の支払い金額で評価しますが、代償分割の対象となった資産の時価と相続税評価額の比で圧縮することも認められています。どちらか有利な方を選ぶことができますが、後者の方法による場合で、相続税の負担を不当に軽減したと認められる場合には、原則通り実際の支払い金額で評価されます。これに関しては、国税不服審判所に下記のような裁決事例があります。http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0501000000.html
(相基通11の2-9、11の2-10、所基通33-1の5、38-7)
(完)
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