2023.02.23
個人の課税事業者が年の中途で個人事業を廃止して法人成りした場合、その法人の消費税の納税義務はどうなるのでしょうか?
納税義務は事業者単位で判定されるので、法人成りする前の個人事業者と、法人成り後の法人とは別々に判定されます。
よって、個人事業者が課税事業者であっても、法人成り後の法人には前々事業年度の課税売上高がないので納税義務は生じません(基通1-4-6)。
ただし、消費税法第12条の2第1項「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」に規定される新設法人に該当する法人成り後の法人には納税義務が生じます。
また、棚卸資産と減価償却資産の引き継ぎには注意が必要です。
1.棚卸資産の引き継ぎ
①所得税
個人事業者は、法人への引継価額を事業所得の計算上、総収入金額(売上高)に加算します。法人は同額を仕入高に計上します。
個人事業者の期首棚卸高は仕入原価に加算し、期末棚卸高は0円になります。
棚卸資産の引継価額は、通常の販売価額が基準になります。この場合、通常の販売価額の概ね70%未満の価額で引き継ぐと低額譲渡に該当するので、通常の販売価額と低額譲渡価額との差額が売上高に加算されます。
ただし、棚卸資産の減耗、陳腐化などの原因により資産価値が低下したものについては、その処分可能価額が通常の販売価額に該当します。
②消費税
引継価額は個人事業者の課税売上高に加算します。法人は課税仕入高に計上します。
また、個人事業者が事業のために購入した棚卸資産を家事使用した場合は、通常の販売価額の50%または仕入価額のいずれか高い方の価額を消費税の課税標準額に加算します(基通5-3-1、5-3-2、10-1-18、10-1-18)。
2.減価償却資産の引き継ぎ
①所得税
個人事業者は、法人への引継価額を譲渡所得の総収入金額に算入し、取得費等の必要経費(減価償却後の帳簿価額)を差し引いた残額(譲渡益)に課税されます。ただし、期末帳簿価額で譲渡した場合の譲渡益は生じません。
法人は中古資産の購入として処理し、中古資産の耐用年数で償却します。
引継価額が時価の2分の1に満たない場合には、その譲渡時の時価で譲渡したものとみなされます(みなし譲渡課税)が、実務上は、法人成りした日の前日の帳簿価額で引継ぎます(法人税基本通達9-1-19)。
この場合、個人事業者と法人間で売買契約書を交わし、譲渡価額を取り決める必要があると考えます。
また、車両の場合、法人への名義変更が困難なことや自動車任意保険料の等級が引き継がれない問題も考えられるので、個人と法人との間で車両の賃貸借契約を締結することもできます。
②消費税
引継価額は個人事業者の課税売上高に加算します。法人は課税仕入高に計上します。
また、個人事業者が事業のために購入した減価償却資産を家事使用した場合は、通常の販売価額の50%または仕入価額のいずれか高い方の価額を消費税の課税標準額に加算します(基通5-3-1、5-3-2、10-1-18、10-1-18)。
例えば営業用の車両4台のうち3台を法人成り後の法人に譲渡し、残り1台を廃業後に家事のために使用した場合、4台とも消費税の課税対象となります。
取得時に課税仕入れとして税額控除したものを清算することになるからです。
(完)
個人の課税事業者が年の中途で個人事業を廃止して法人成りした場合、その法人の消費税の納税義務はどうなるのでしょうか?
納税義務は事業者単位で判定されるので、法人成りする前の個人事業者と、法人成り後の法人とは別々に判定されます。
よって、個人事業者が課税事業者であっても、法人成り後の法人には前々事業年度の課税売上高がないので納税義務は生じません(基通1-4-6)。
ただし、消費税法第12条の2第1項「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」に規定される新設法人に該当する法人成り後の法人には納税義務が生じます。
また、棚卸資産と減価償却資産の引き継ぎには注意が必要です。
1.棚卸資産の引き継ぎ
①所得税
個人事業者は、法人への引継価額を事業所得の計算上、総収入金額(売上高)に加算します。法人は同額を仕入高に計上します。
個人事業者の期首棚卸高は仕入原価に加算し、期末棚卸高は0円になります。
棚卸資産の引継価額は、通常の販売価額が基準になります。この場合、通常の販売価額の概ね70%未満の価額で引き継ぐと低額譲渡に該当するので、通常の販売価額と低額譲渡価額との差額が売上高に加算されます。
ただし、棚卸資産の減耗、陳腐化などの原因により資産価値が低下したものについては、その処分可能価額が通常の販売価額に該当します。
②消費税
引継価額は個人事業者の課税売上高に加算します。法人は課税仕入高に計上します。
また、個人事業者が事業のために購入した棚卸資産を家事使用した場合は、通常の販売価額の50%または仕入価額のいずれか高い方の価額を消費税の課税標準額に加算します(基通5-3-1、5-3-2、10-1-18、10-1-18)。
2.減価償却資産の引き継ぎ
①所得税
個人事業者は、法人への引継価額を譲渡所得の総収入金額に算入し、取得費等の必要経費(減価償却後の帳簿価額)を差し引いた残額(譲渡益)に課税されます。ただし、期末帳簿価額で譲渡した場合の譲渡益は生じません。
法人は中古資産の購入として処理し、中古資産の耐用年数で償却します。
引継価額が時価の2分の1に満たない場合には、その譲渡時の時価で譲渡したものとみなされます(みなし譲渡課税)が、実務上は、法人成りした日の前日の帳簿価額で引継ぎます(法人税基本通達9-1-19)。
この場合、個人事業者と法人間で売買契約書を交わし、譲渡価額を取り決める必要があると考えます。
また、車両の場合、法人への名義変更が困難なことや自動車任意保険料の等級が引き継がれない問題も考えられるので、個人と法人との間で車両の賃貸借契約を締結することもできます。
②消費税
引継価額は個人事業者の課税売上高に加算します。法人は課税仕入高に計上します。
また、個人事業者が事業のために購入した減価償却資産を家事使用した場合は、通常の販売価額の50%または仕入価額のいずれか高い方の価額を消費税の課税標準額に加算します(基通5-3-1、5-3-2、10-1-18、10-1-18)。
例えば営業用の車両4台のうち3台を法人成り後の法人に譲渡し、残り1台を廃業後に家事のために使用した場合、4台とも消費税の課税対象となります。
取得時に課税仕入れとして税額控除したものを清算することになるからです。
(完)