大槻雅章税理士事務所

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№90 所得税:相続した一定の空き家を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除

2016-07-17 | ブログ
2016.05.30 所得税:相続した一定の空き家を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除

親と別居していた子供が、一人暮らしの親が住んでいた家屋と敷地を相続して売却するケースがあります。この場合、親が取得した時の価額が分からないときは、売却価額の95%が課税対象になります。

そのため、相続人が売却を躊躇して空き家のまま放置するケースも多く、地域の生活環境に悪影響を及ぼす原因となっています。

こうした状況を踏まえ、親が生前一人で居住していた家屋(旧耐震基準しか満たしていないもの)とその敷地を一定の要件で相続人が譲渡した場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」を適用して、譲渡所得の金額から3000万円を控除できるという税制改正が行われました。

これは、適切な管理がなされていない空き家の売却を促進しようという政策です。

今回は、相続した一定の空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除について解説したいと思います。

1.特別控除適用の対象となる人

被相続人居住用家屋又はその家屋の敷地の用に供されていた土地等を相続により取得した個人。

※被相続人居住用家屋とは、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(いわゆる旧耐震基準の家屋)で、相続開始直前まで被相続人以外に居住していた者がいなかった家屋をいいます。

ただし、マンション等の区分所有建物は対象から除かれます。

※被相続人が相続開始直前に老人ホームに入居していた場合については、生活の本拠が老人ホームに移るため、「相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋」という要件を満たすことが出来ないため、本特例は適用できないようです。

相続税では、老人ホームへの入所により空き家となっていた建物の敷地について、小規模宅地等の特例が認められている措置と比較すれば、相続税法と所得税法の整合性に疑問を感じるところです。

2.譲渡期限

平成28年4月1日~平成31年12月31日の期間内の譲渡

※相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間の譲渡に限られるので、平成25年1月2日以後に開始した相続により取得した被相続人居住用家屋が適用対象となります。


3.特別控除の対象となる譲渡


①被相続人の居住用家屋又はその敷地に供されている土地の譲渡

②被相続人の居住用家屋の除却後の敷地に供されていた土地等の譲渡

※譲渡する家屋については、相続時から除却・譲渡時まで事業、貸付又は居住の用に供していないこと(すなわち空き家であること)が要件となります。

4.譲渡価額の上限


譲渡対価の額が1億円を超えるものは対象外となります。

※譲渡対価の額とは、被相続人の居住用家屋と敷地に供されていた土地等の合計額。


5.申告時の要件


本特例は、確定申告書に、地方公共団体の長等の当該被相続人居住用家屋及び当該被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等が上記要件を満たすことの確認をした旨を証する書類その他の書類の添付が必要になります(措法35⑪)。


6.確認をした旨を証する書類その他の書類とは?

確認書の交付を受けるためには、空き家の所在地の市町村に「被相続人居住用家屋等確認申請書」に必要事項を記載し、併せて以下の書類を提出することが必要となります。


① 被相続人の除票住民票の写し

② 被相続人の居住用家屋譲渡時の相続人の住民票の写し(家屋を取壊し更地にして譲渡する場合も同じ)。

③ 家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等(家屋を取壊し更地にして譲渡する場合には除却工事に係る請負契約書の写しも必要)。

④ 以下のABCの書類のいずれか

A .電気・ガスの閉栓証明書又は水道の使用廃止届出書

B .空き家であること又は売却時に家屋を除却する旨を宅地建物取引業者が広告した書面の写し

C .所在市町村が対象となる譲渡であることを容易に認めることができるような書類

⑤ 更地にして譲渡する場合、家屋の取壊し後の敷地等の使用状況が分かる写真

⑥ 更地にして譲渡する場合、家屋取壊しから敷地等を譲渡した日までの間の固定資産税課税証明書等の写し



(完)