2023.11.25
土地、家屋の貸与を無償又は低い対価で受けた者は、通常支払うべき対価の額との差額が「経済的利益」となり、給与として課税されます(所法36①、所基通36-15(2))。
今回は、役員に自社所有の社宅を貸与する場合の課税関係について質問がありましたので解説します。
1.役員に無償又は低い対価で貸与する場合
役員に社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の通常の賃貸料(以下「賃貸料相当額」という)を受け取っていれば、給与として課税されません。
ただし、役員に無償で貸与すれば「賃貸料相当額」が給与として課税され、「賃貸料相当額」より低い家賃を受け取っている場合は「賃貸料相当額」と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
2.賃貸料相当額の計算
「賃貸料相当額」は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、豪華社宅である場合は、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
A式:小規模社宅以外の「賃貸料相当額」の月額計算(所基通36-40)
(①×12%(耐用年数30年超は10%)+②×6%)×1/12
①とは、その年度の家屋の固定資産税の課税標準額(以下B式において同じ)
②とは、「その年度の敷地の固定資産税の課税標準額(以下B式において同じ)
B式:小規模住宅等の「賃貸料相当額」の月額計算(所基通36-41)
貸与した家屋の床面積が132㎡以下(木造家屋以外の家屋については99㎡以下)の「賃貸料相当額」は、上記A式にかかわらず、次に掲げる算式により計算した金額とします。ただし、敷地だけを貸与した場合には、この取扱いは適用されません。
①×0.2%+12円×床面積㎡/3.3㎡+②×0.22%
3.「賃貸料相当額」の計算に関する細目(所基通36-42)
上記A式又はB式により「賃貸料相当額」を計算するに当たり、次に掲げる場合は、それぞれ次のとおり計算します。
(1)その貸与した家屋が1棟の建物の一部である場合又はその貸与した敷地が1筆の土地の一部である場合のように、固定資産税の課税標準額がその貸与した家屋又は敷地以外の部分を含めて決定されている場合
当該課税標準額を基として求めた通常の賃貸料の額をその建物又は土地の状況に応じて合理的に按分するなどにより、その貸与した家屋又は敷地に対応する「賃貸料相当額」を計算します。
(2)その住宅等の固定資産税の課税標準額が改訂された場合
その改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限の属する月の翌月分から、その改訂後の課税標準額を基として計算します。
(3)その住宅等が年の中途で新築された家屋のように固定資産税の課税標準額が定められていないものである場合
当該住宅等と状況の類似する住宅等に係る固定資産税の課税標準額に比準する価額を基として計算します。
(4)その住宅等が月の中途で役員の居住の用に供されたものである場合
その居住の用に供された日の属する月の翌月分から、役員に対して貸与した住宅等としての「賃貸料相当額」を計算します。
4.所得税法の非課税規定
所得税法第9条(1)-六には、給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるものは非課税所得とされています。
所得税法施行令第21条(非課税とされる職務上必要な給付)には第四号で、「国家公務員宿舎法(昭和二十四年法律第百十七号)第十二条(無料宿舎)の規定により無料で宿舎の貸与を受けることによる利益その他給与所得を有する者でその職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するために家屋の貸与を受けることによる利益」は非課税所得とされています。
このことから、宗教法人の住職や宮司等が庫裏や社務所等に無償で居住している場合には、その庫裏や社務所等に居住することは、職務の遂行上やむを得ない必要に基づくものと認められますので、それが、通常、住職や宮司等が居住する家屋又は部屋として「相当なもの」である限り源泉徴収の対象とする必要はありません(国税庁:宗教法人の税務P7、「宗教法人の庫裏等に無償で居住している場合」)。
ただし「相当なもの」とは、社会通念上公正で妥当なものであるところ、「相当なもの」であるかどうかは、取得価額、内外装、設備の状況等各種の要素を総合勘案して判定されます。
また、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の豪華な設備や役員個人の嗜好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
豪華社宅である場合は、通常支払うべき使用料に相当する額が給与として課税されます。
5.他から借り受けた小規模住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記2のB式で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
(1)役員に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2)役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
(完)
土地、家屋の貸与を無償又は低い対価で受けた者は、通常支払うべき対価の額との差額が「経済的利益」となり、給与として課税されます(所法36①、所基通36-15(2))。
今回は、役員に自社所有の社宅を貸与する場合の課税関係について質問がありましたので解説します。
1.役員に無償又は低い対価で貸与する場合
役員に社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の通常の賃貸料(以下「賃貸料相当額」という)を受け取っていれば、給与として課税されません。
ただし、役員に無償で貸与すれば「賃貸料相当額」が給与として課税され、「賃貸料相当額」より低い家賃を受け取っている場合は「賃貸料相当額」と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
2.賃貸料相当額の計算
「賃貸料相当額」は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、豪華社宅である場合は、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
A式:小規模社宅以外の「賃貸料相当額」の月額計算(所基通36-40)
(①×12%(耐用年数30年超は10%)+②×6%)×1/12
①とは、その年度の家屋の固定資産税の課税標準額(以下B式において同じ)
②とは、「その年度の敷地の固定資産税の課税標準額(以下B式において同じ)
B式:小規模住宅等の「賃貸料相当額」の月額計算(所基通36-41)
貸与した家屋の床面積が132㎡以下(木造家屋以外の家屋については99㎡以下)の「賃貸料相当額」は、上記A式にかかわらず、次に掲げる算式により計算した金額とします。ただし、敷地だけを貸与した場合には、この取扱いは適用されません。
①×0.2%+12円×床面積㎡/3.3㎡+②×0.22%
3.「賃貸料相当額」の計算に関する細目(所基通36-42)
上記A式又はB式により「賃貸料相当額」を計算するに当たり、次に掲げる場合は、それぞれ次のとおり計算します。
(1)その貸与した家屋が1棟の建物の一部である場合又はその貸与した敷地が1筆の土地の一部である場合のように、固定資産税の課税標準額がその貸与した家屋又は敷地以外の部分を含めて決定されている場合
当該課税標準額を基として求めた通常の賃貸料の額をその建物又は土地の状況に応じて合理的に按分するなどにより、その貸与した家屋又は敷地に対応する「賃貸料相当額」を計算します。
(2)その住宅等の固定資産税の課税標準額が改訂された場合
その改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限の属する月の翌月分から、その改訂後の課税標準額を基として計算します。
(3)その住宅等が年の中途で新築された家屋のように固定資産税の課税標準額が定められていないものである場合
当該住宅等と状況の類似する住宅等に係る固定資産税の課税標準額に比準する価額を基として計算します。
(4)その住宅等が月の中途で役員の居住の用に供されたものである場合
その居住の用に供された日の属する月の翌月分から、役員に対して貸与した住宅等としての「賃貸料相当額」を計算します。
4.所得税法の非課税規定
所得税法第9条(1)-六には、給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるものは非課税所得とされています。
所得税法施行令第21条(非課税とされる職務上必要な給付)には第四号で、「国家公務員宿舎法(昭和二十四年法律第百十七号)第十二条(無料宿舎)の規定により無料で宿舎の貸与を受けることによる利益その他給与所得を有する者でその職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するために家屋の貸与を受けることによる利益」は非課税所得とされています。
このことから、宗教法人の住職や宮司等が庫裏や社務所等に無償で居住している場合には、その庫裏や社務所等に居住することは、職務の遂行上やむを得ない必要に基づくものと認められますので、それが、通常、住職や宮司等が居住する家屋又は部屋として「相当なもの」である限り源泉徴収の対象とする必要はありません(国税庁:宗教法人の税務P7、「宗教法人の庫裏等に無償で居住している場合」)。
ただし「相当なもの」とは、社会通念上公正で妥当なものであるところ、「相当なもの」であるかどうかは、取得価額、内外装、設備の状況等各種の要素を総合勘案して判定されます。
また、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の豪華な設備や役員個人の嗜好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
豪華社宅である場合は、通常支払うべき使用料に相当する額が給与として課税されます。
5.他から借り受けた小規模住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50パーセントの金額と、上記2のB式で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
(1)役員に無償で貸与する場合
賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2)役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
(完)