2024.04.01
今回は「生計を一にする」という税法独特の表現について質問がありましたので、その意義と具体的な規定をまとめました。
1.「生計を一にする」の意義
「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではなく、次のような場合には、それぞれ次によります(所基通2-47)。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
① 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
② これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
税法は親族の範囲を明定していませんが、民法は第725条で「六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族」と定めており、税法は借用概念としてこの民法規定に拠っています。したがって、親族の範囲はかなり広くなります。
2.所得税での具体例
(1) 所得控除
納税者と「生計を一にする」ことを条件に受けられる所得控除として、医療費控除(法73条)、配偶者控除(法83条)、配偶者特別控除(法83条の2)、扶養控除(法84条)があります。
医療費控除とは、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が所得控除の対象となります。
この場合、扶養は条件とはならず、生計を一にしている配偶者や扶養親族の医療費を納税者が支払っている場合には、その納税者の医療費控除の対象となります。
別居の場合も上記の所基通2-47の条件を満たせば医療費控除の対象となり得ます。
(2) 生計を一にする親族への対価
居住者と「生計を一にする」配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとされています(法56条)。詳細は記事№60参照。
3.相続税での具体例(小規模宅地等の特例)
相続税法の小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住や事業をしていた宅地等について、一定の要件を満たせば、その宅地等の評価額を50~80%減額できる特例のことです。
この特例は、その相続開始の直前において被相続人と「生計を一にしていた」被相続人の親族に限られます(措法69の4)。
(完)
今回は「生計を一にする」という税法独特の表現について質問がありましたので、その意義と具体的な規定をまとめました。
1.「生計を一にする」の意義
「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではなく、次のような場合には、それぞれ次によります(所基通2-47)。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
① 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
② これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
税法は親族の範囲を明定していませんが、民法は第725条で「六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族」と定めており、税法は借用概念としてこの民法規定に拠っています。したがって、親族の範囲はかなり広くなります。
2.所得税での具体例
(1) 所得控除
納税者と「生計を一にする」ことを条件に受けられる所得控除として、医療費控除(法73条)、配偶者控除(法83条)、配偶者特別控除(法83条の2)、扶養控除(法84条)があります。
医療費控除とは、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が所得控除の対象となります。
この場合、扶養は条件とはならず、生計を一にしている配偶者や扶養親族の医療費を納税者が支払っている場合には、その納税者の医療費控除の対象となります。
別居の場合も上記の所基通2-47の条件を満たせば医療費控除の対象となり得ます。
(2) 生計を一にする親族への対価
居住者と「生計を一にする」配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとされています(法56条)。詳細は記事№60参照。
3.相続税での具体例(小規模宅地等の特例)
相続税法の小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住や事業をしていた宅地等について、一定の要件を満たせば、その宅地等の評価額を50~80%減額できる特例のことです。
この特例は、その相続開始の直前において被相続人と「生計を一にしていた」被相続人の親族に限られます(措法69の4)。
(完)