大槻雅章税理士事務所

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№194 法人税:特定関係子法人から受取る配当等

2025-04-04 | ブログ
2025.04.04

№179で外国子会社配当益金不算入制度の解説をしましたが、令和4年4月1日以後開始事業年度からは、子会社からの配当の益金不算入と当該子会社株式の譲渡損失を組み合わせた国際的な租税回避に対抗措置が取られているので補足説明をします。

1. 税制改正前の制度

改正前の規定は、次の①②のような建付けでした。
① 内国法人が外国子会社から配当等を受け取る場合、外国子会社の株式等を25%以上、6 月以上継続して保有しているときは、当該配当等の95%が法人の所得の計算上益金不算入となります。そして、当該配当等の原資が利益剰余金である限り、当該配当等を支払う外国子会社の株式等の帳簿価額に影響を与えません。
② 内国法人が外国子会社の株式等を譲渡する場合、譲渡する株式等の帳簿価額が当該譲渡対価を上回る金額は、譲渡損失として譲渡した内国法人の所得計算において損金算入されます。

つまり、内国法人が外国子会社株式を取得して当該外国子会社から配当等を受け取り、その後、外国子会社株式等を譲渡した場合には、内国法人の所得計算上、受取配当の95%が課税されず(100%内国子会社からの受取配当金については全額非課税)、かつ、配当により時価が下落したことにより生じる外国子会社株式の譲渡損失は損金算入されていました。

その結果、次のような事案の租税回避が行なわれました。
ソフトバンク株式会社(以下「S社」という。)は、2016年にイギリスのアーム・ホールディングス(以下「A社」という。)を3.3兆円で買収し外国子会社としました。
その後、S社はA社から約2.6兆円の配当金を受取りましたが、一定の外国子会社から受取る配当金は法人税法の「外国子会社配当益金不算入制度」の規定を適用すれば95%相当が益金不算入となる方法で法人税を節税しました。

また、S社は多額の配当金の支払いによりA社の時価を下げた後、A社株式をソフトバンクグループ内で譲渡しました。
親会社であるS社が保有する外国子会社A社株式の帳簿価額は取得時の3.3兆円ですが、A社の時価は多額の配当金の支払いで含み損が生じていたので、S社は譲渡により約2.5兆円の株式譲渡損失を計上することが出来ました。

2. 税制改正後の制度

上記の租税回避に対して課税当局は、法人が一定の支配関係にある子会社から一定の配当を受ける場合、株式の帳簿価額からその配当額のうち益金不算入相当額等を減額するという税制改正を行いました。

改正後(令和4年4月1日以後開始事業年度から適用)は、法人が、配当等の決議日において関係者と併せて株式または議決権等を直接または間接50%超保有する特定関係子法人」から配当等を受け取る場合で、当該「特定関係子法人」から同一事業年度内に受け取る配当等の合計額が、「特定関係子法人」株式等の帳簿価額の10%を超える場合には、受け取った配当等の金額のうち、益金不算入相当額を特定関係子法人株式等の帳簿価額から減額することになりました。

ただし、次のような適用除外規定があります。

① 特定関係子法人が内国法人であり、設立の日から、配当受取法人との間で特定支配関係を有することとなった日まで、継続して発行済株式等の90%以上を内国法人等によって保有されていた場合。
つまり、内国法人が90%以上の株式を保有する内国法人の子会社は対象になりません。
② 対象配当金額が特定支配関係発生後の会計上の利益剰余金の純増額に満たない場合。
つまり、株式保有後に当該子法人が稼いだ利益を配当する場合は、適用対象外になります。
③ 特定支配関係発生日から10 年を経過した日以後に配当等が行われる場合。
つまり、長期保有の場合は適用対象外になります。
④ 対象配当金額が2,000 万円以下の場合。
つまり、配当が少額の場合は適用対象外となります。

3.まとめ

上記の改正は、株式の譲渡に係る譲渡損の計上を防止することが主な目的です。よって、「受取配当等の益金不算入(法人税法第23条)」や「外国子会社から受ける配当等の益金不算入(同第23の2条)」の規定よりも「有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入(同第61条の2)」、「有価証券の一単位当たりの帳簿価額の法定算出方法(法令第119条の7、同第119条の7の2、同第119条の8、同第119条の8の2)等」の規定を射程とした改正といえます。

(完)