大槻雅章税理士事務所

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№56 相続税:老人ホームに入居した場合の小規模宅地特例の適用

2013-07-25 | ブログ
2013.06.29 相続税:老人ホームに入居した場合の小規模宅地特例の適用

前回No55で、「住所」の意義について所得税法は、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」という民法の概念を借用していることを述べました。それでは、被相続人が入居していた老人ホームで死亡した場合、以前に被相続人が居住していた住宅の敷地に対して、相続税法の小規模宅地評価減の特例は適用されるのでしょうか?

被相続人が居住していた小規模宅地を相続で取得した相続人は、一定の要件を満たせば80%の評価減を受けられますので、「生活の拠点」が老人ホームにあったのか、以前の住宅にあったのかで相続税の額が大きく相違します。

この場合の「生活の拠点」の判断基準は、その老人ホームが特別養護老人ホームなのか、それ以外の非介護型の老人ホームなのかで異なります。

一般的に、特別養護老人ホームは身体や精神に著しい障害があり常時介護を要する人のための介護施設であるため、病院の入院と同様に「生活の拠点」が移転したとはいえません。これに対し所有権型・終身利用権型の老人ホームに入居した場合には、課税庁は「生活の拠点」は老人ホームにあるものとして、自宅敷地の小規模宅地特例の適用を認めていません。

それでは、自宅介護の困難性、自立生活の困難性等の理由で非介護型の老人ホームに入居した場合はどうでしょうか。

これに関し、平成25年度の税制改正(※参照)で、所有権型・終身利用権型の老人ホームに入居した場合の要件が緩和されました。すなわち、老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、
①被相続人に介護が必要なため入所したものであること
②当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと

の要件が満たされる場合に限り、小規模宅地特例の適用が認められることになりました。この改正は平成26年1月1日以後の相続・遺贈から適用されることになります(改正法附則85)。

※小規模宅地特例に関する平成25年度の税制改正

特定居住用宅地の適用対象面積が、改正前240㎡から330㎡に引き上げられました。(措法69の4②二)。また、特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能となりましたので(措法69の4②一、二)、事業用400㎡+居住用330㎡=730㎡までに範囲が拡大されたことになります。この改正は、平成27年1月1日以後の相続・遺贈から適用されます(改正法附則85)。

特定居住用宅地とは、被相続人等の居住の用に供されている宅地で、被相続人の配偶者又は一定の要件を満たす親族が取得したものをいいます。

ここで一定の要件とは、被相続人と同居していた親族が、相続開始の時から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を保有している必要があります(ただし、被相続人の配偶者が取得する場合は無条件で特例が適用されます)。

(完)