大槻雅章税理士事務所

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№109 不服申立前置主義の見直し

2018-02-03 | ブログ
2018.02.03 不服申立前置主義の見直し

今回は、平成26年税制改正で全面的に改正された不服申立ての手続きについて解説したいと思います。

税務署長等が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服がある納税者に対して、これを審理し救済する制度として「不服申立て」と「訴訟」があります。

「不服申立て」と「訴訟」の手続きに関し、国税通則法115条(国税に関する法律に基づく処分)は、不服申立てに対する行政庁の決定又は裁決を経た後でなければ、訴訟を提起することができないと定めています。

これを不服申立前置主義といいます。

国税に関する争訟は、課税処分が大量かつ反復して発生すること、また、専門的であることなどの特殊性を考慮して、裁判所への大量の取消訴訟が生ずることを回避するとともに、税務行政の統一的運用に資する等を意図した制度です。



1.平成28年3月31日までの不服申立て手続き




税務署長等が行った処分に不服がある者は、まず、税務署長等に対してその処分の取消しや変更を求めることができます。これを「異議申立」といいます。

次に、この「異議申立」に対する税務署長等の決定を経た後の処分になお不服があるときは、「審査請求」を行うことができます。

国税についての審査請求は、原処分庁とは独立した専門機関として設置された国税不服審判所に提起します。

更に、国税不服審判所長の裁決を経た後の処分になお不服があるときは、裁判所に対して訴訟を提起することができます。



2.平成28年4月1日以降の不服申立て手続き



平成28年4月1日以降になされた国税に関する課税処分については、「異議申立」から「再調査の請求」に名称変更され、再調査の請求を経ないで審査請求を行うことが可能となりました(再調査の請求か審査請求の選択制)。

税務署長等が行った処分に不服がある場合、3ヶ月以内に再調査の請求、又は再調査の請求を経ないで国税不服審判所への審査請求、のいずれかを選択できます。

再調査の請求に対する決定に不服がある場合には、1ヶ月以内に国税不服審判所への審査請求が可能です。

国税不服審判所の裁決に不服がある場合には6ヶ月以内に訴訟を提起する必要があります。

国税不服審判所の本部は東京に置かれ、全国の主要12都市に支部、7都市に支所が置かれ、国税不服審判所長の下に、国税審判官、国税副審判官、国税審査官及び管理室(課)から構成されています。国税不服審判所長は、国税庁長官が財務大臣の承認を受けて任命しています。

国税審判官には、判事あるいは検事、税務に従事した経験豊富で適性を有する職員等から登用しています。これは、国税審判官には、税務に関する専門的な知識及び事実関係の調査能力とともに法律的な素養が必要であることを考慮したものです。


(完)