大槻雅章税理士事務所

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№166 2024年以降の贈与税・相続税の改正

2022-12-31 | ブログ
2022.12.31

2023年(令和5年)度の税制改正で、今後の贈与税や相続税に関し、納税者にとってメリットのある改正とデメリットとなった改正がありました。

1.納税者にメリットのある改正

相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。これは、2024年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税に適用されます。
これにより、相続時精算課税制度を選択した場合でも、年110万円以下の贈与であれば贈与税はかからず、相続財産にも加算されないので相続税もかかりません。また、贈与税の申告も不要となります。
相続時精算課税制度の解説は№58、№6を参照

この改正は、暦年課税の基礎控除110万円が相続時精算課税制度を選択しても使えるようになったという意味ではありません。相続時精算課税制度を一度選択したら暦年課税制度は二度と使えないというルールは今までと同じです。

では、今回の改正はどのような意味なのでしょうか?
簡単にいうと、今回の改正で新たに加わった110万円の基礎控除は、あくまでも相続時精算課税制度の贈与額の上限2500万円の中で控除できるという制度です。そして、2024年1月1日以降に行った贈与は、毎年110万円を控除して相続財産に加算します。
これまでは、一度相続時精算課税制度を選択すると、少額の贈与でも贈与税の申告が必要でしたが、改正後は『110万円までなら贈与税も相続税もかからず、申告もいらない』制度となったわけです。

ただし注意点として、相続時精算課税制度を選択した際の贈与額の累計が2500万円に達していなくても、年110万円を超えた場合は贈与税の申告が必要です。期限後に申告をすれば20%の税率で贈与税がかかります。

2.納税者にデメリットとなる改正

今回の改正で納税者にとってデメリットとなるのが、暦年課税制度で行う生前贈与の相続財産への加算期間が3年から7年に変更となることです。

暦年課税制度において、相続発生以前3年間に贈与した財産は、相続時に相続財産に加算することになっています。これは、贈与した金額が年110万円以下の基礎控除の範囲内であっても同様に相続財産に加算され相続税の対象になります。

今回の改正では、2024年1月1日以降の贈与から、この3年間という期間が7年に延長されます。この改正により、相続発生以前の3年間に贈与された財産の取扱いはこれまでと同じですが、それより前の4年間に贈与された分については、全体から100万円を差し引いた金額を相続財産に含めて計算することになります。

(完)


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