北朝鮮は最近、軍事機密や金正日(キム・ジョンイル)総書記の健康問題、後継者関連の情報が外部に漏れるのを防ぐため、「情報戦争」に突入したことが分かった。
北朝鮮の内部事情に詳しい消息通によると、北朝鮮の国家安全保衛部は「秘密を厳守し、外部の敵が内部に浸透することを阻止しよう」という内容の講演を大々的に行っている。保衛部が語る「敵」とは、韓国と米国のことだ。
保衛部は講演で、敵が内部瓦解工作、特に北朝鮮の情報を得るため血眼になっているとして、一部の堕落した者が敵の賄賂(わいろ)や「ハニートラップ」に引っかかり、誤りを犯す事例を紹介した。さらに、彼らのように共和国の司法機関に逮捕され厳しい取り調べを受けることのないよう、関係者が自首することを要求した。北朝鮮が繰り広げるスパイとの戦争のために、華僑や対外貿易を手掛ける人々は日々薄氷を踏むような心境にある。中国・丹東に住む朝鮮族のある人物は、「北朝鮮は今年初めから、あらゆる華僑とその親戚の平壌訪問を一切禁じており、旅行先を新義州に制限している」と語った。
国境地域で外部とのメッセンジャーになる可能性があるという理由から、華僑が個人で所有しているノートパソコンも没収され、中国と通話できる携帯電話が発見された場合には直ちにスパイとみなし逮捕している。
この人物は、北朝鮮に住む華僑は以前なら1カ月に1度中国に行くことができたが、権限が縮小され、3カ月に1度しか行けなくなり、今年からは6カ月に1度にまで制限されている、と語った。北朝鮮の情報機関が華僑を執拗(しつよう)に疑うのは、西側諸国による北朝鮮情報の収集が最近強化されているからだ。
華僑と並び保衛部から圧迫されているのは、北朝鮮と中国を行き来する「貿易機関の従事者」だ。北朝鮮当局は今年初め、中国に派遣された貿易会社のうち年間100万ドル(約1億円)を稼げない機関はすべて撤収させ、保衛部の要員を増強し、貿易関係者の行動を監視している。
最近、北朝鮮の役人を案内した朝鮮族の人物は、「同行する保衛部の要員が2倍に増え、簡単な北朝鮮情報ですら入手するのが困難になった」と語った。またこの人物は、「このところ北朝鮮の貿易関係者は、中国で事業など到底できない、と泣き言を言っている」と語った。
これと共に北朝鮮当局は、朝中国境地域について「封鎖」から「閉鎖」を目標に定め、非社会主義「グルッパ」を年初から派遣し、集中的に監視している。「グルッパ」とは、保衛部・検察・保安省・労働党の要員で構成される合同監察団のことをいう。
最近国境を越えた脱北者は、「最近では、朝中国境を越えることの方が、中国から韓国に行くよりはるかに難しい」と語った。北朝鮮当局が、脱北者が発生した国境地域の保衛部や警備隊の責任者に対する問責を強化しており、金があっても国境を越えにくくなったからだ。
一部の国境区域では、電気鉄条網の設置を検討中だという。ある幹部クラスの脱北者は、「北朝鮮は今、最も困難な状態に差しかかっている。住民たちに対する統制の手綱を緩めて一度でもコントロールを失えば体制が崩壊する危険な状況にあることから、政府が取り得るあらゆる手段を総動員している」と主張した。