梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

歌舞伎座最後の稽古場だより・1

2010年03月30日 | 芝居
ついに歌舞伎座とお別れする日がやってまいります。
あとひと月で、この劇場に立つことができなくなる…。
こう思いますと、若輩の私だって、様々なことが思い起こされ、どうしたって寂しくなります。

そんな感慨を抱きながら臨むことになります<御名残四月大歌舞伎>。
『熊谷陣屋』の<附立>でした。
私が入門してからでも4回目となる師匠の源義経。いくつかある用事は四天王や軍兵が役として勤めてくださいますので、弟子にとっては用事がないお役なのですが、そのぶん集中して舞台を拝見できますのが嬉しいです。播磨屋(吉右衛門)さんが熊谷直実をお勤めになる公演に携わりますのは、私は実は初めてですので、改めて勉強したいと思います。

            ◯

本日私がかかわるお稽古はこれだけでしたので、昼過ぎからは銀座で買い物したりして過ごし、夜は錦糸町のシネコンでロブ・マーシャル監督『NINE』を拝見いたしました。
1982年にブロードウェイで初演でされたミュージカルの映画化ですね。
原作も見たことがないうえに、あらすじすらろくろく知らずに拝見いたしたのですが、まことに贅沢な<大人の童話>、頭も使わず肩も凝らず、素直に単純に楽しむことができました。
よい意味での無駄、遊び心が横溢しているのがなんとも嬉しくなります。鹿爪らしい理屈はご無用、スランプに陥った映画監督グイド・コンティー二と、彼を取り巻く魅惑のミューズたちの狂騒をニヤニヤしながら眺めていればよいのです。

舞台に敷かれた砂と、タンバリンがまことに効果的に使われる5曲目『ビー・イタリアン』、歌の印象がピカイチの7曲目『シネマ・イタリアーノ』にワクワク。サントラは絶対買うべきですよ。
そして女優陣の豪華さは申すまでもございませんが、監督をさりげなくサポートする衣装デザイナー役のジュディ・デンチにはしびれましたね。包容力、渋い色気、ユーモア。76歳ですってよ…!