梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

菅でできてます

2008年10月24日 | 芝居
頭にかぶる<笠>にはいろいろ種類がございますが、写真は大詰<桜田門>に出てくる井伊家の侍がかぶっている<一文字笠>です。名称は、勾配がない真っ平らな形からきています。
御覧の通り、実際にかぶってみますと、お盆が乗っかっているようでちょっと面白いですね。どちらかというと侍が使うことが多いですが、町人、百姓が使うこともあります。

笠に取り付けられた紐は丸ぐけです。左右に輪になってついておりまして、耳を輪の中に入れるようにあてて、片方に付けられた平紐を顎の下を通して反対側にひっかけ、折り返した端を顎の上で結ぶ。これはどんな笠でも一緒です。
髷の下に通っている紐は<わたり>とも申しますが、これが髷に引っ掛かるので前にかぶりすぎることがないのです。逆に笠をとる時は、このわたりが髷に引っ掛からないように気をつけます。

…一文字笠といえば『吉野山』の佐藤忠信。スッポンからこの笠を手にして登場します。
この場合、紐は踊りには必要ないので、綺麗事ということで、あらかじめ外してあります。
幕切れは、早見の藤太にフリスビーよろしく投げつけるくだりも。それをキャッチした藤太は背中に回して仏様の後光の洒落。

あとは『鈴ヶ森』の立廻り、からみの雲助がこの笠を両手で持ったまま、飛び跳ねた瞬間にパッと足の下を潜らせるという技も、大きな見せ場になっていますね。

とりとめもなく笠の話でした。