梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

勝手知ったる六助の家

2006年06月30日 | 芝居
本日は<初日通り舞台稽古>。全二場のうち、『毛谷村』は、師匠演じる六助の住居ということで、あらかじめ舞台に設置されている小道具<出道具>が大変多く、しかもそのどれもが、お芝居の進行に密接に関わっているので、置き所の確認や不備がないかのチェックが大変です。
おもちゃ箱、お釜、タバコ盆、お膳、茶碗、盃、布団に屏風、仏壇の中には鐘木、鉦、数珠、etc…。
この他着替えの衣裳を包んだたとう紙は押し入れの中、下手の物干棹には弥三松の着替え。全て開幕前のわずかな時間にセットしなくてはならないのが忙しなく、私が後見をさせて頂いた時は、毎日毎日額に汗しておりました。今回は弟弟子が後見ですから、彼の担当。今日は私や兄弟子も立ち会って様子を見ました。

以前書いたかもしれませんが、黒衣であれ裃であれ、後見というものは、その芝居の一切の責任を負うものだと私は教わりました。芝居の進行をきちんと把握する。師匠の役の動きを覚える。毎日の小道具の管理、手入れをする。師匠の衣裳の着付をする。単に舞台上での仕事をこなすだけではダメなのです。もしアクシデントがおこったとき迅速に対応できるかも大切なところで、黒衣の懐に簡単な裁縫道具や汗ふきをしのばせるのも、そういう事態に備えての心がけなのですね。

あくまでも<陰>の存在なのですが、どれだけ師匠に、芝居自体に尽くせるか。ここが大事なのではないでしょうか。

私も、とりあえず自分のお役を無事に勤め終えましてほっとしております。明日は国立劇場の<創立記念日>で、全館休業、お休みです。朝寝坊をして掃除をして、マッサージにも行って、それから披露宴の打ち合わせにも。なんだかきちんと休めるか不安になってきました…。