梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

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2006年06月01日 | 芝居
『藤戸』『二人夕霧』『暗闇の丑松』の<初日通り舞台稽古>。師匠が立て続けに二演目にお出になったので、双方で後見を勤める私もバタバタと忙しない半日でした。
『藤戸』は居所合わせを事前に行ったためもあり、また舞踊ということもあり、スムースに進行しました。今日でお出になる方々の居所もわかりましたので、明日からはごたつかずに仕事ができると思います。ただ一カ所、舞台中央での播磨屋(吉右衛門)さんの踊りが終わるか終わらぬかのギリギリのところで、上手で私の後見が仕事をしに移動するところがございまして、それがお邪魔にならないかとても心配です。動き方に注意を払い、お客様のお目障りにならないように重々気をつけます。

『二人夕霧』では、以前お伝えしましたように、あらかじめ舞台にセットしておく<出道具>の準備が大変です。先ほどの<裃後見>の衣裳を脱いですぐさま黒衣になり、師匠がお化粧をし直していらっしゃる間にすべて確認したかったのですが、三味線、釜、囲炉裏、打掛がかかった衣桁、タバコ盆、etc…。あれこれ位置を直したり、実際お使いになる幹部俳優さんと相談しているうちに、残念ながら時間切れ。師匠の着付をしてから作業再開となりました。
とはいえ三年前にもやった芝居ですので、大変な問題もなく、二、三の改善点(作り直し等)を明日に残しはいたしましたが、芝居そのものは順調に進行しました。
後見の段取りは三年前と同じにいたしましたが、今日のお稽古で変更点もございました。明日の初日の舞台で初めて試すことになるのがちょっとコワいですが、落ち着いて取り組みます。

昨日も<舞台稽古>をした『暗闇の丑松』は、ほぼノンストップで。死骸を運ぶ時、先導する役者が手にする手燭(手持ちの燭台)が、本物のロウソクを使っての<本火>になりまして、ゆらゆら揺れる炎に照らし出されるお米の姿がなんとも悲しい美しさでした。いずれご説明いたしますが、舞台で火を使うのは、実は大変なことなのでございます。

いよいよ明日は初日! 皆様と舞台でお会いできますことを楽しみにしております。