今月昼の部の『藤戸』はもとより、夜の部の『身替座禅』、他に『棒しばり』や『船弁慶』『土蜘』など、お能や狂言から歌舞伎に移された『松羽目物』では、登場人物の出入りのために<お幕>と<臆病口(おくびょうぐち)>というものが舞台に設置されます。
どちらも本行の能舞台から移したものでございますが、お能の方では<お幕>とは呼ばず、<揚幕(あげまく)>、あるいは<切り幕>と呼ぶそうですし、<臆病口>は正式には<切戸口>(きりどぐち)というのだそうです。
さて<お幕>ですが、これは舞台下手の出入りに使われるもの。花道の出入りがある場合には、いつもの揚幕(劇場の紋を染め抜いたもの)を外して取り付けられます。写真をご覧頂ければお分かりかと思いますが、五色の緞子を縫い合わせた幕の下端に、細い竹棹を結びつけ、開閉の係の者が二人でこれを持ち上げることで幕が開きます。幕の開閉は、基本的には出入りする俳優の弟子が勤めますが、黒の筒袖の着付に茶の細縞の袴、白足袋という、お幕係専用の拵えをいたします。この扮装は衣裳方の管轄ではなく、<小裂(こぎれ)>という、舞台で使う布製品全般を管理する部署が担当することになっております。
二人がかりとはいえ、やってみると意外と重いもので、大人数が連なって出る時などは、しばらく腕が上げっぱなしになるので辛いですね。上げる早さも、演目や役によって変わります。
一方<臆病口>は、舞台上手に作られた、横に引いて開けるかたちの扉です。間口はごく狭いので、どんなお役でも、いったんしゃがんでくぐり抜けるように出入りしなくてはなりません。<お幕>同様、使う役者の弟子が開閉をいたしますが、後見が出入りする時は自分で開閉します。
なぜ<臆病>口なのかと申しますと、お能の方で、ストーリー上、シテに斬られたとか、滅ばされたとか、あるいは逃亡する役が、多くここを使って退場するからなのだそうですよ。
以上にご説明した舞台面は、夜の部『身替座禅』でご覧頂けると思いますが、実は『藤戸』の方では、<臆病口>をなくして、上手にも<お幕>を設置するという、少々異例の舞台面になっております(写真もその上手側のお幕です)。演出上の理由でございますが、ぜひその目でお確かめ下さいませ。…下手上手に花道と、計三カ所の<お幕>ということで、お幕係も六人です!
どちらも本行の能舞台から移したものでございますが、お能の方では<お幕>とは呼ばず、<揚幕(あげまく)>、あるいは<切り幕>と呼ぶそうですし、<臆病口>は正式には<切戸口>(きりどぐち)というのだそうです。
さて<お幕>ですが、これは舞台下手の出入りに使われるもの。花道の出入りがある場合には、いつもの揚幕(劇場の紋を染め抜いたもの)を外して取り付けられます。写真をご覧頂ければお分かりかと思いますが、五色の緞子を縫い合わせた幕の下端に、細い竹棹を結びつけ、開閉の係の者が二人でこれを持ち上げることで幕が開きます。幕の開閉は、基本的には出入りする俳優の弟子が勤めますが、黒の筒袖の着付に茶の細縞の袴、白足袋という、お幕係専用の拵えをいたします。この扮装は衣裳方の管轄ではなく、<小裂(こぎれ)>という、舞台で使う布製品全般を管理する部署が担当することになっております。
二人がかりとはいえ、やってみると意外と重いもので、大人数が連なって出る時などは、しばらく腕が上げっぱなしになるので辛いですね。上げる早さも、演目や役によって変わります。
一方<臆病口>は、舞台上手に作られた、横に引いて開けるかたちの扉です。間口はごく狭いので、どんなお役でも、いったんしゃがんでくぐり抜けるように出入りしなくてはなりません。<お幕>同様、使う役者の弟子が開閉をいたしますが、後見が出入りする時は自分で開閉します。
なぜ<臆病>口なのかと申しますと、お能の方で、ストーリー上、シテに斬られたとか、滅ばされたとか、あるいは逃亡する役が、多くここを使って退場するからなのだそうですよ。
以上にご説明した舞台面は、夜の部『身替座禅』でご覧頂けると思いますが、実は『藤戸』の方では、<臆病口>をなくして、上手にも<お幕>を設置するという、少々異例の舞台面になっております(写真もその上手側のお幕です)。演出上の理由でございますが、ぜひその目でお確かめ下さいませ。…下手上手に花道と、計三カ所の<お幕>ということで、お幕係も六人です!