50円 返せ

展望台には よく双眼鏡が置いてある。

時々無料の所があるが、大抵は有料で100円を入れると数分間シャッターが開いて 思いっきり遠くの景色が見えて大喜びすることになる。

ところが 恥を忍んで云うのだが これがどうも私には苦手で 双眼鏡を覗く度に自己嫌悪に陥ることになる。

数年前に 色々な観光地の双眼鏡を連続して覗くまで 私は自分のことを気づいていなかった。

ある観光地で 双眼鏡を覗いた時に どうやら私は他の人とは 少し違うのだと云うことを察した。

右目を合わせると左目が覗けないのだ。
少し左右の幅を調節できるようになっているものもあるが、それでも調節範囲外なのか 私の目の位置には合わない。

だから、100円を入れて両目で双眼鏡を覗いているフリをして いつも片目で景色を見ながら 心の中では「50円返せ」と叫んでいるのだ。

鏡を よく見てみると･････左右の目の位置が標準よりは離れているらしい。

電器店へ行ったとき、売られている様々な種類の双眼鏡を そっと試してみた。

AもBもCもDもダメで E社だけのがグイッと開くと左右の目で覗けるのがわかり、欲しくも無いのに 思わず買ってしまった。

これを逃すと 一生 自分に合う双眼鏡が手に入らないかも知れないと思ったからだ。

目
の位置が離れていると良いことがあるのだろうかと 少し考えてみた。

他の人の見え方は知らないので 比較はできないが、もしかしたら 立体的に見える力が勝っているのかも知れない。

でも私は普通が良いなぁ と常々思っているのだ。

両親の遺影をみながら どちらに似たのだろうと思うのだが 不思議だねぇ
どちらにも似ているように思えるのだから。