琉球新報 金口木舌
ヘビはナメクジを恐れ、ナメクジはカエルを恐れ、カエルはヘビを恐れる。三者とも身動きが取れなくなる「三すくみ」だ
▼普天間飛行場の移設問題で国、県、北部12市町村がその三すくみ状態にある
▼キャンプ・シュワブ沿岸部へのV字形滑走路案に反発する県は暫定ヘリポート案を主張し、新たな協議機関への参加条件に県案協議を掲げる。代替施設の建設計画策定を急ぐ防衛庁はこれを拒否し、県抜きでも協議機関を設置する構え。北部市町村は協議機関の早期設置を求めつつも県抜きでの協議参加を否定する
▼5日、北部首長と県幹部が会合を開き、北部振興に関する連携と首長側が県の主張に理解を示すことを確認した。双方の考え方の隔たりは大きいが、三すくみ状態を打開しようと協調体制を整えた格好だ
▼三すくみの代表例にグー、チョキ、パーのじゃんけんがある。三者がそれぞれの主張を貫けば、相子のまま永遠に決着はつかない
▼状況打開には歩み寄りが必要だが、防衛庁は強硬姿勢を崩さず先行きは不透明だ。振興策に限らず跡地利用や軍従業員の雇用など基地問題で国の支援は当然の責務である。基地受け入れの引き換え条件にされてはたまらない。国と地方の力関係で押し切られることがないよう注視したい。
(琉球新報 2006年8/8 9:33)
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丁度一年前の琉球新報のコラムだが、内容に一年の歳月の経過を感じさせないから不思議だ。
それだけ普天間基地移転問題が膠着している証拠だ。
住宅密集地に隣接の普天間基地移転は依然として放置したまま、相も変らずヘビとナメクジとカエルが三すくみでもつれ合っている。
厄介なことに、この三匹の動物にもう一匹ジュゴンが加わった。
ジュゴンはこれまで基地移転反対派のシンボルだった。
これが「沖合い設置」案の強力な味方になろうとしている。
「沖合い」に基地設置ではジュゴンの環境破壊ではないかと言うのが小池防衛大臣の意見。
稲嶺前知事は1998年の知事選で普天間代替基地の完成後、「軍民共用」と、「15年使用期限」を公約した。
あれから10年、公約を果たさぬまま現知事にバトンタッチされた。
普天間基地の移転は合意されても行く先が決まらない。
県は滑走路の沖合い設置を主張し、名護市も態度を翻し沖合い案。(普天間移設 「沖合移動」で連携 )
辺野古に陣取るプロ市民団体は勿論沿岸案のV字型滑走路に反対し、沖合い案を主張し新聞を賑わしている。
今朝の琉球新報の「声」欄。
大阪出身で沖縄に本籍も移し結婚もして沖縄在住のMさんが「県民の基地への本音は」と題して投稿している。
「沖縄の人々に、基地に対してどう本音で思っているのか聞いてみたい」と素朴な疑問を呈していた。
どうやらMさん、沖縄在住前の新聞による情報と住んで見てからの情報のギャップに戸惑っているように見受けられた。
沖縄の「民意」は新聞の見出しでは計れない。
で、ジュゴンはどっちの味方?
日本で絶滅の恐れのある動植物をまとめた環境省のレッドリストが3日更新され、新たに沖縄本島周辺の海に生息するジュゴンが、哺乳(ほにゅう)類の絶滅危惧(きぐ)種に指定された。
ジュゴンは世界的には約10万頭が生息しているが、北限となる日本では、沖縄本島周辺でしか確認されなくなっている。「生息数は50頭を超えることはない」として、絶滅の恐れが最も高い「絶滅危惧1A類」に分類された。
リストではこのほか、減少傾向にあるイリオモテヤマネコも、「絶滅危惧1B類」から1A類にランクが上がった。増加傾向にある屋久島のヤクシマザルと、下北半島のホンドザルはリストから外れた。
今回の更新では、「哺乳類」「昆虫類」「植物1」など6分類が見直され、昨年12月に更新した4分類と合わせて、計10分類で3155種となった。
(2007年8月3日21時39分 読売新聞)
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沖縄タイムス 2007年8月3日(金) 朝刊 1面
防衛相「沖合」に難色 普天間移設で会談
知事、協議会開催に慎重
【東京】仲井真弘多知事は二日、小池百合子防衛相と防衛省で会談した。小池氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設について、「沖縄の海を守ることに力点を置いている」と述べ、環境への配慮を強調。名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、海域の埋め立て面積が増加することから、難色を示したものとみられる。
小池氏は、日米の自然保護団体が米国防総省に名護市辺野古沖のジュゴン保護を求めて米連邦地裁で争われている訴訟を取り上げた上で、「そういう(訴訟の)問題もあるので、自分は環境面を重要視している。防衛大臣が環境問題も語る。それが二十一世紀の新しい姿だ」と説明した。
これに対し仲井真知事は「普天間の問題は名護市も受け入れている。地元の気持ちをくんでまとめていただきたい」と述べ、沖合移動にあらためて理解を求めた。
小池氏はそのほか、普天間移設に関する協議会について「できるだけ早く開きたい」と協議を促進したい考えを示したが、仲井真知事は「よく調整する必要がある」と指摘。
沖合移動や普天間飛行場の「三年内の閉鎖状態」の実現など県の要望に対する政府側の対応が先決との考えから、慎重な姿勢を示した。
会談では、普天間飛行場移設に伴う環境影響評価(アセスメント)や、北部振興事業については話し合われなかった。
仲井真知事はこれに先立ち、二〇〇八年度国庫支出金要請で高市早苗沖縄担当相とも会談。新規の「IT津梁パーク(仮称)整備事業」の展開や、政府の「アジア・ゲートウェイ構想」の拠点に沖縄を位置付けることなどを要望。北部振興事業を継続するよう文書で求めた。高市氏は「だいたい要望の内容には沿えると思う」と前向きな返答をした。