「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

防災の常識・非常識(その2):自助とは「自分の命は自分で守る」の先にある

2014-10-26 23:08:58 | シリーズ「防災の常識・非常識」
いささか挑発的なタイトルを付けました。

「自分の命は自分で守る」の先とは、一体何を言おうというのでしょうか。

実はこのタイトル、耳目を集めるためのひっかけタイトルです。
自分の命は自分で守る、に、引用を意味するかぎかっこ(「」)がついていることに気付いて下されば、
「旅の坊主」の意図も想像してもらえると思うのですが……。

とある保育園での実例です。
保育士の方が「自分の命は?」と幼子に問うと、
園児たちが「自分で守る!」と答えるのです。

皆さんはこれを微笑ましく感じますか?
それとも、痛々しいと感じますか?

「自分の命は自分で守る」は、
防災の世界で一二を争う有名なコピーです。
しかし、私はこのコピーは大嫌いです。
私が問いたいのはその先、つまり、
「自分の命を守る方法論を一緒に教えていますか?」ということです。

幼稚園児・保育園児にとっての「自分の命は自分で守る」とは、
(幼稚園保育園の先生方が的確な行動を取ってくれることが大前提ですが)、
その先生方(つまり大人)の指示に従う、ということでしょう。
それが、幼子たちにとって、
自分の命を守るためにほぼ唯一実行可能な方法論だと私は思っています。

発達段階や社会的立場の差により、
自助すなわち自分の命を守るための方法論は変わってきます。
問われるべきは、キーワードを(馬鹿の一つ覚えのように)覚えることではなく、
その先に、段階や立場に応じた具体的な方法論を持つことである。

この挑発的なタイトルで私が言いたかったことは、そういうこと、なのです。

コピーの先にある自助の基本は、やはり2つでしょう。
「旅の坊主」流防災論議に慣れ親しんだ方々には毎度の話ですが、
「安全な家に住もう」と「安全な場所に住もう」、
やはりこの2つだと、私は考えています。

自助とは「安全な家に住もう」+「安全な場所に住もう」である、と、
具体的な形で示されたならば、
それを実現するための方法について、考え始めてくれるのではないでしょうか。

私はそのことを期待しています。

目利きになれるか+経済力を確保できるか。

身もふたもないと言われるかもしれませんが、
やはりそこが出発点とならないならば、
それはニセモノ(少なくてもホンモノではない)と言わなくてはならないでしょう。

防災のコピーを覚えることの意味がゼロだとは言いません。
しかし、「毎度おなじみ」のフレーズとなってしまうと、
右の耳から左の耳へと流れていき、モノを考えることにつながらないと思います。

さて、このように書くと、必ず問われることがあります。
すなわち、安全な家でも安全な場所でもない家・場所に住んでいる人は
どうすればよいのか、と。

まさにこれが防災の一大テーマ、
この不定期連載のトップ3に入る重要テーマでもあります。
それへの方法論は数百字で済むような単純な話ではありませんが、
もちろん、追々に応えていくつもりです。期待してお待ち下さい。